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JAPAN ACH STUDY GROUP 日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ

本サイトは、LCHの患者さんやご家族の方々と医師との意見・情報交換の場です。

第42回 最新学術情報

最近掲載されたLCH関連の論文抄録を紹介します。

1)「中枢神経系の若年性黄色肉芽腫ファミリー腫瘍(CNS-JXG)におけるBRAF V600E変異:小児のErdheim-Chester病を含んだ修正診断アルゴリズム」

BRAF V600E mutation in Juvenile Xanthogranuloma family neoplasms of the central nervous system (CNS-JXG): a revised diagnostic algorithm to include pediatric Erdheim-Chester disease.

Picarsic J, et al. Acta Neuropathol Commun. 2019 Nov 4;7(1):168.

ERK経路の遺伝子に変異を伴う若年性黄色肉芽腫ファミリー腫瘍(JXG)は、「L」(ランゲルハンス)グループに分類され、これにはLCHおよびErdheim-Chester病(ECD)が含まれる。ECDとLCHにおいては、BRAF V600E変異が遺伝子変異の大部分を占めるが、JXGにおいてはBRAF V600E変異を認めた報告は3例のみで、それらはすべて中枢神経系(CNS)限局病変の男児であった。この後方視的症例シリーズでは、BRAF後の時代における小児のCNS-JXGファミリー腫瘍の臨床病理学的分類を再定義し、小児のECDを含む診断アルゴリズムを改訂した。照会ファイルから22例のCNS-JXGファミリー腫瘍が抽出され、そのうち64%(n=14)においてBRAF V600E変異の検査(遺伝子変異および/またはVE1免疫組織化学)がされていた。このうち、71%(n=10)は小児例(≤18歳)で、半数は(n=5)BRAF V600E変異陽性であった。BRAF V600E変異陽性群は、陰性群と比較して、診断時の平均年齢に違いはなかった(陽性群7.0歳[3〜12歳] vs. 陰性群7.6歳[1〜18歳])が、男児が多く(陽性群80% vs. 陰性群40%)、多巣性CNS病変が多く(陽性群80% vs. 陰性群20%)、全身病変が多かった(陽性群40% vs. 陰性群0%)。CNS-JXGの画像所見はさまざまであったが、BRAF V600E群の一部では、白質変化を伴う造影効果のあるCNS腫瘤病変が特徴的であった。BRAF V600E群において、臨床像と放射線画像の両者から小児ECDと診断できる例があった。治療の選択肢はさまざまで、外科的切除や化学療法が行われ、BRAF V600E陽性の1例でBRAF阻害剤であるダブラフェニブによる分子標的療法が行われていた。小児のBRAF V600E変異陽性CNS-JXG腫瘍は、男児に多く、ECDのような侵攻性の病像を呈すると考えられる。小児ECDの症例を見出すために、形態学的診断だけではなく、臨床像と放射線画像、遺伝子変異を考慮した最終的な統合診断による、改訂したCNS-JXGの診断アルゴリズムを提案する。小児のBRAF V600E陽性CNS-JXG腫瘍は、Lグループ組織球症とは異なる疾患群であるのか、または小児のECDと分類されるのかを判断するには、長期の経過観察によるさらなる研究が必要である。

2)「小児の難治性多臓器型LCHに対するベムラフェニブ:国際観察研究」

Vemurafenib for Refractory Multisystem Langerhans Cell Histiocytosis in Children: An International Observational Study.

Donadieu J, et al J Clin Oncol. 2019 Nov 1;37(31):2857-2865.

【目的】BRAF V600E変異陽性の難治性小児LCHに対するベムラフェニブ(VMF)の適応外使用を評価する。【患者と方法】12か国の54例がVMF 20 mg/kg/日を服用した。患者をリスク臓器(肝臓、脾臓または血球減少症)浸潤の有無によって分類した。有害事象(CTCAE ver. 4.3)と、疾患活動性スコアによる治療反応を主要評価項目とした。【結果】リスク臓器浸潤陽性が44例、陰性が10例であった。診断時年齢の中央値は0.9歳(範囲 0.1〜6.5歳)であった。VMF開始時年齢の中央値は1.8歳(範囲 0.18〜14歳)、追跡期間の中央値は22か月(範囲 4.3〜57か月)、治療期間の中央値は13.9か月(総計855か月)であった。 治療開始8週時点で、38例が完全寛解、16例が部分寛解し、疾患活動性スコアの中央値は診断時の7から0に減少した(p‹0.001)。最も頻度の高い有害事象は皮疹で、74%に認めた。続発性皮膚がんは認めなかった。血漿VMF濃度(範囲 10〜20 mg/L)は安全で効果的と考えられた。VMFを中止した30例中24例が再発した。血漿cell-free DNA中のBRAF V600E変異アレル割合は、VMFにより減少したが(中央値:診断時3.6% vs. VMF治療中1.6%, p‹0.001)陰性化せず、VMF中止による再発リスクと関連していた。VMFに続いて行われたさまざまな経験的治療(造血幹細胞移植、クラドリビン/シタラビン療法、MEK阻害薬、ビンブラスチンなど)のいずれによっても、BRAF V600Eクローンは消失しなかった。【結論】難治性のBRAF V600E陽性小児LCHにおいて、VMFは安全かつ効果的と思われた。効果的な維持療法を見出すためにさらなる研究が必要である。

3)「エジプトの小児高リスクLCHの転帰、中等量メトトレキサートは転帰を改善するか?」

Outcome of High-risk Langerhans Cell Histiocytosis (LCH) in Egyptian Children, Does Intermediate-dose Methotrexate Improve the Outcome?

Sedky MS, et al. J Pediatr Hematol Oncol. 2019 Nov;41(8):635-643.

高リスク多臓器型(RO陽性)LCHの生存率は低い。小児単一施設でのRO陽性 LCHの転帰を提示する。2007年7月~2015年7月の間に治療された50例のRO陽性 LCH患者を後方視的に分析した。2012年まではビンブラスチン(VBL)とプレドニゾロン(PSL)に中等量メソトレキサート(idMTX)を加えた寛解導入療法を用い(n=20)、以降はidMTXを省略した(n = 30)。idMTX群と非idMTX群の3年全生存率(OS)は、それぞれ75%と63%(p=0.537)で差はなかったが、無イベント生存率(EFS)は、それぞれ36.9%と13.2%(p=0.005)でidMTX群がよかった。導入療法開始12週時点で「より良い状態」が得られた率は、idMTX群で80%、非idMTX群で55%であった。低いOSとEFSの両方に関連する統計的に有意な因子は、3系統の血球減少症、肝機能障害、肝・脾・造血器の3リスク臓器浸潤の合併、単回の寛解導入療法であった。寛解導入療法時の増悪に関連する因子は、3系統の血球減少症、肝機能障害、非idMTXであり、再発に関連する因子は、秋/冬の季節、肺病変、男児、idMTXであった。1年OSは、寛解導入療法時に増悪群、再発群、両者なし群で著しく異なり、それぞれ47%、93%、95%であった(p=0.001)。結論として、idMTXはEFSの向上に関連している。寛解導入療法時の増悪は、その後の再発に関連し、予後不良であった。3系統の血球減少症、肝機能障害、3リスク臓器浸潤の合併、中枢神経系リスク部位、および肺病変を考慮したリスク層別化が必要と考えられる。

4)「肺LCHにおける自然気胸と航空機旅行:患者調査」

Spontaneous pneumothorax and air travel in Pulmonary Langerhans cell histiocytosis: A patient survey.

Singla A, et al. Respir Investig. 2019 Nov;57(6):582-589.

【背景】肺LCH患者における、自然気胸の最適な管理や、航空機旅行の安全性は十分に評価されていない。【方法】希少肺疾患クリニックネットワークと組織球症協会によって募集された肺LCH患者において、症状および航空機旅行の安全性について調査した。【結果】計94例において調査ができた。肺LCHの診断時の年齢は中央値40歳(範囲:15〜67歳)で、症状の発現から診断までの期間は平均2.9年(範囲:-4〜31年)であった。22例(23%)に少なくとも1回の自然気胸があり、そのうち14例(64%)に少なくとも1回の自然気胸の再発(同側再発[10例; 45%]、対側再発[8例; 36%])があった。初回の自然気胸の年齢は平均29歳であった。19%の患者で自然気胸が肺LCHの診断の契機となっており、多くは2回目の自然気胸の後に肺LCHと診断されていた。外科的胸膜癒着術を受けた患者は、保守的な治療を受けた患者と比較し、自然気胸の再発率は半分に低下していた(29% vs. 65%、p=0.025)。2例が航空機旅行中に自然気胸を発症し、航空機旅行関連の気胸の発症率は、1例あたり2.4%、1フライトあたり0.27%であった。【結論】自然気胸は、肺LCHによくみられる症状であり、約4例に1例が発症し、再発率は高い。外科的胸膜癒着術は、自然気胸の再発率を大幅に減少させる。肺LCH患者の航空機旅行関連の自然気胸のリスクは、1,000フライトあたり約2〜3回である。

5)「成人LCH患者における気胸の管理と転帰」

Management and outcomes of pneumothorax in adult patients with Langerhans cell Histiocytosis.

Le Guen P, et al. Orphanet J Rare Dis. 2019 Oct 21;14(1):229.

【背景】肺LCH患者は経過観察中に気胸を繰り返すことがあるが、その管理は標準化されていない。気胸の再発リスク因子は不明である。【方法】この後方視的研究では、気胸を合併し、初回の気胸発症後少なくとも6か月以上追跡された肺LCH患者を対象とした。初回の気胸の治療と経過観察中の気胸再発の有無を明らかにすることを目的とした。また、気胸再発に関連する因子を検索し、肺機能の転帰に対する影響を評価した。再発までの期間はKaplan-meier法によって推定し、すべての再発イベントを考慮した再発の累積ハザードを推定した。単変量CoxモデルとAndersen-Gillカウントプロセスを統計分析に使用した。【結果】対象患者は43例(年齢中央値26.5歳[四分位範囲22.9-35.4]、男性 26例、喫煙者39例)で、観察期間の中央値は49か月であった。初回気胸の主な治療法は胸腔ドレナージであり、70%の例は気胸が治癒した。23例(53%)で気胸が再発し、観察期間中に計96回の気胸のエピソードを認めた。気胸が再発した患者群では、1例あたりの気胸の回数の中央値は3回[四分位範囲2-4]であった。1件を除き、再発はすべて初回の気胸から2年以内に生じていた。胸部手術によって、同側気胸の初回再発までの時間が延びることも、観察期間中の全体の再発回数が減少することもなかったが、再発率は開胸手術のほうが胸腔鏡手術よりも低かった(p=0.03)。初回の気胸の時点で、肺機能検査で努力肺活量が肺活量よりも減少(air-trapping)している例は、再発率が高かった(ハザード比 5.08, 95%信頼区間[1.18-21.8], p=0.03)。気胸の再発は、その後の肺機能低下と関連しなかった(p=0.058)。【結論】この結果は、肺LCHの「活動期」に気胸が再発することを示している。この観察研究では、気胸の同側の初回再発までの期間および再発回数は、保存的治療と胸部手術治療とで変わりはなかった。肺LCH患者の気胸再発のリスクを低減するための最良の管理法を明らかにするため、さらなる研究が必要である。

6)「成人および小児発症LCH患者63例における内分泌障害」

Endocrine manifestations in a cohort of 63 adulthood and childhood onset patients with Langerhans cell histiocytosis.

Sagna Y, et al. Eur J Endocrinol. 2019 Sep;181(3):275-285.

【目的】LCHは、あらゆる臓器や組織に浸潤するまれな炎症性骨髄性腫瘍である。内分泌障害については、症例報告や小規模な後方視的研究がある。成人発症(AO)および小児発症(CO)の大規模なLCH患者コホートにおいて、内分泌障害について分析することを目的とした。【研究デザイン】三次医療施設であるPitié-Salpêtrière大学病院(フランス、パリ)で2002年1月から2017年12月までに実施された単一施設の観察研究。【方法】63例のLCH患者(AO群:40例、CO群:23例)において、下垂体、性腺、副腎および甲状腺機能を、臨床的、生物学的、形態学的に評価した。58例を追跡評価した。【結果】38/63例(60.3%)に下垂体機能の全ホルモン検査を行った。そのうち63.2%で少なくとも1つの下垂体前葉ホルモンの欠乏症が見出だされた。最も頻度の高い障害は、中枢性尿崩症(CDI)と成長ホルモン欠乏症(GHD)(それぞれ55.3%)で、次いでゴナドトロピン欠乏症(34.2%)と甲状腺刺激ホルモン欠乏症(23.7%)であった。全検査が行われなかった25例では、44%にCDI、50%にGHD、30.4%にゴナドトロピン欠乏症、16%に甲状腺刺激ホルモン欠乏症を認めた。下垂体前葉機能不全は、CO群により多かったが(P=0.003)、AO群でもCO群においてもCDIの有無とは関連していなかった。内分泌機能障害はほとんどの例で非可逆的で、経過観察中に新たなホルモン欠乏症が出現する例もあった。【結論】内分泌障害は、LCHにおいて成人発症でも小児発症でも頻度が高く、診断時と経過観察時に注意深く評価する必要がある。下垂体前葉機能不全とCDIは関連していなかった。

7)「中国のLCH患者における臨床病理学的特徴とBRAF(V600E)変異との関連」

Association between clinicopathologic characteristics and BRAF(V600E) expression in Chinese patients with Langerhans cell histiocytosis.

Huang H, et al. Thorac Cancer. 2019 Oct;10(10):1984-1992.

【背景】LCHの診断が困難な症例や、一次治療が奏功しなかったLCH患者では、V-rafマウス肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログB1(BRAF)V600E変異の有無を検査することが推奨されている。中国のLCH患者において、BRAF V600E変異の頻度は、さまざまな報告がある。【方法】2013年から2017年の間に入院し、病理学的検査で診断が確定したLCH患者を後方視的に分析した。ヒトBRAF V600E増幅難治性変異システムPCR(ARMS-PCR)キットを用いて、収集した組織検体のBRAF V600E変異を検出した。【結果】対象患者は、男性46例(68.7%)と女性21例(31.3%)で、平均年齢は29.1歳(範囲:2〜76歳)であった。成人例(45例, 67.2%)、多臓器型(49例, 61.3%)が多かった。全体の15/67例(22.4%)がBRAF V600E変異陽性であった。BRAF V600E変異と、年齢(小児:成人=5例[22.7%] vs. 10例[22.2%]、P=0.54)、性別(女性:男性=9例[19.6%] vs. 6例[28.6%]、P=0.61)、病型(単一臓器:リスク臓器陽性多臓器:リスク臓器陰性多臓器=3例[16.7%]:12例[28.6%]:0例[0%]、P=0.19)、転帰(治癒:改善/安定:増悪:死亡=44.4% vs. 19.2% vs. 20% vs. 0%、P=0.37)に関連はなかった。33例(49.2%)に肺病変を認め、そのうち12例(36.3%)が肺生検を受けていた。4例が孤発性肺LCHであったが、全例がBRAF V600E変異が陰性であった。【結論】BRAF V600E変異陽性率は、他の報告よりも低かった。さらに、中国の症例では、BRAF V600E変異は、患者の年齢や性別、病型、転帰と関連しない可能性がある。

8)「エピゲノミクスと単一細胞シーケンスによるLCHの分化階層の解析」

Epigenomics and Single-Cell Sequencing Define a Developmental Hierarchy in Langerhans Cell Histiocytosis.

Halbritter F, et al. Cancer Discov. 2019 Oct;9(10):1406-1421.

LCHは、主に小児に発症するまれな腫瘍である。がんと炎症性疾患が合わさった両者の中間的な疾患であり、がんの発生を研究するための魅力的なモデルとなっている。LCHの病態とその特徴的な臨床的不均一性の根底にある分子メカニズムを探索するために、LCH病変組織におけるトランスクリプトームとエピゲノムの多様性を解析した。単一細胞RNAシーケンスを用い、LCHの生検組織の中に、LCH前駆細胞と推定される細胞や分化したLCH細胞と推定されるいくつかの分画からなる、複数の種類のLCH細胞を同定した。免疫組織化学法により、全ての生検組織で増殖性のLCH細胞が確認された。クロマチンアクセシビリティ解析により、さまざまなLCH細胞の分画において、エピゲノムおよび遺伝子発現調節が異なることを確認した。要約すると、LCHの単一細胞解析により、LCH病変においては、予想外に、LCH細胞間に複雑な分化階層の存在を示唆する細胞・トランスクリプトーム・エピゲノムの不均一性があることが明らかとなった。【意義】この研究は、単一細胞のトランスクリプトームとエピゲノム解析を組み合わせることにより、LCH病変の分子学的病像を明らかにした。LCH細胞の不均一性が大きいことが明らかとなり、これはLCH細胞に分化階層が存在することによって部分的に説明される。私たちの研究結果は、LCH研究を前進させる新たな洞察と仮説、および個別化療法の基盤となりうる。

9)「消化管LCHの消化管病変:リスク臓器である可能性」

CLangerhans Cell Histiocytosis of the Gastrointestinal Tract: Evidence for Risk Organ Status.

Yoon HS, et al. J Pediatr. 2019 Sep;212:66-72.e3.

【目的】消化管LCHの「リスク状態」を検討する。【研究デザイン】既報の消化管LCH 43例と、当院で治療を受けた消化管病変のないLCH 43例とで、転帰を比較した。カプラン・マイヤー生存曲線から推定される5年間全生存率に消化管病変の有無により差があるかを、全患者、リスク臓器浸潤のない患者、最近の症例(LCH治療レジメンによる変化を補正するため)において比較した。さらに、消化管LCHとリスク臓器浸潤との関連について解析した。【結果】消化管病変のある小児LCHの5年全生存率は、消化管病変のない例よりも有意に低かった(45.3% vs. 94.6%, P=0.001)。リスク臓器浸潤のない例(53.6% vs. 100%; P=0.001)、2000年以降に診断された例(75% vs. 100%; P=0.012)においても、有意に低かった。消化管病変のある例はリスク臓器浸潤の合併率が4倍高かった(OR 4.359; 95%CI 1.75-10.82、P=0.001)。【結論】この限られた後方視的研究から、消化管病変のある例はリスク臓器浸潤とは関連なく生存率が低い可能性が示唆された。消化管病変がリスク臓器となるかどうかを前方視的研究で評価すべきと考えられる。消化管病変がある場合、リスク臓器浸潤の合併リスクが4倍高い可能性がある。 LCHと診断された幼児では、胃腸症状と消化管LCHに注意が必要である。

10)「LCHの細胞診:47例の報告」

Cytological diagnosis of Langerhans cell histiocytosis: A series of 47 cases.

Phulware RH, et al. Cytopathology. 2019 Jul;30(4):413-418.

【目的】LCHは、小児に好発するが、どの年齢層にも発症するまれな疾患である。LCHの診断は容易ではなく、希な疾患であるため診断が遅れることがある。本研究では、大規模コホートにおいて細胞形態学的特徴を明らかにする。正確な細胞診が可能となれば、不必要な生検を避けることができ、適切な診療につながる。【方法】2003-2016年の14年間に穿刺吸引(FNA)により採取された細胞検体で診断された47例のLCHを診療記録から抽出した。2人の異なる病理学者が、細胞塗抹標本を半定量的に顕微鏡で評価した所見を分析した。【結果】患者の診断時の年齢は9か月から28歳であった。症例の大半は0〜5歳であった。最も頻度の高い病変部位は頭頸部で、頸部リンパ節と頭蓋の腫脹を伴っていた。2例がそれぞれ鼠径部リンパ節穿刺および気管支肺胞洗浄(BAL)によって診断されていた。細胞塗抹標本の細胞密度は、大部分の症例(58%)で中~高密度で、72%で多数のLCH細胞を認めた。38%に壊死領域を認め、78%に巨細胞が見られた。大部分の症例で、軽度の好酸球浸潤(61%)、わずかなリンパ球浸潤(83%)、軽度の好中球浸潤(64%)を認めた。12例(26%)で、強拡大10視野あたり1-2個の有糸分裂を認めた。異常な有糸分裂は認めなかった。【結論】免疫組織化学染色で特徴的なマーカーを発現するLCH細胞の存在を確認することにより、細胞塗抹標本でLCHの診断が可能であり、より侵襲的な手段である生検が不要となる。