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JAPAN ACH STUDY GROUP 日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ

本サイトは、LCHの患者さんやご家族の方々と医師との意見・情報交換の場です。

第54回 最新学術情報

最近掲載されたLCH関連の論文抄録を紹介します。

1)中等量シタラビンは、成人のLCH以外の組織球症の効果的な治療法である」

Intermediate-dose cytarabine is an effective therapy for adults with non-Langerhans cell histiocytosis.

Liu T, et al. Orphanet J Rare Dis. 2022 Feb 7;17(1):39.

【背景】Erdheim-Chester病(ECD)、Rosai-Dorfman病(RDD)、不定細胞組織球症(ICH)、および分類不能組織球症を含む非LCH組織球症は、標準的な治療戦略のないまれな史観である。非LCH織球症の初期治療または二次治療法として中等量シタラビンを使用した経験を報告する。【結果】9例のECD、5例のRDD、1例のICH、1例の分類不能組織球症患者が登録された。中等量シタラビン療法として、5週間ごとに3日間、12時間ごとに0.5〜1.0 g/m2のシタラビンを静脈内投与した。シタラビン療法開始時の年齢は中央値47.5歳(範囲18-70歳)であった。投与されたシタラビンのサイクル数は中央値5.5(範囲2-6)であった。全奏功率(ORR)はコホート全体で87.5%、完全奏功が12.5%、部分奏功が75.0%であった。1例がシタラビン療法の19か月後に再発した。コホート全体の追跡期間は中央値15.5か月(範囲6〜68か月)であった。推定2年無進行生存率と全生存率はそれぞれ85.6%と92.3%であった。最も一般的な毒性は、グレード4の好中球減少症およびグレード3/4の血小板減少症を含む血液学的有害事象であった。治療関連死はなかった。【結論】中等量シタラビン療法は、非LCH組織球症、特に中枢神経病変のある患者に対して有効な治療オプションである。

2)「血球数、BRAF V600E変異およびMAP2K1変異で構成されるリスクモデルは、小児LCHの予後不良の予測因子となる」

A Risk Model Composed of Complete Blood Count, BRAF V600E and MAP2K1 Predicts Inferior Prognosis of Langerhans Cell Histiocytosis in Children.

Wang L, et al. Front Oncol. 2022 Feb 4;12:800786.

【背景】小児で最も多い組織球症であるLCHは、さまざまな症状と転帰を示す。LCHの標準的な予後評価システムはない。小児LCHにおける血球数、BRAF V600E、MAP2K1を複合した予測モデルの有意性を検討した。【方法】71例の小児LCH患者のコホートを後方視的に検討した。血小板数/リンパ球数比(PLR)、好中球数/リンパ球数比(NLR)、全身性炎症反応指数(SIRI:好中球数×単球数/リンパ球数)、全身性免疫炎症指数(SII:血小板数×好中球数/リンパ球数)、BRAFV600E、およびMAP2K1の予後予測の有意性を分析した。【結果】組織球学会のLCH患者の分類は、NLR、SIRI、および無増悪生存(PFS)と、骨病変の有無はSIRIと、肝臓病変の有無はNLR、SII、SIRI、PFSと、脾臓病変の有無はSIRIと、肺病変の有無はNLR、PFSと、CNS病変の有無はPFSと、BRAF V600Eの有無はPLR、NLR、SIRI、SII、PFS、OSと相関していた(p <0.05)。MAP2K1変異は、NLR、SIRI、PFS、OSと相関していた(p <0.05)。NLR、PLR SIRI、SIIの上昇は、PFSとOSの低下と関連していた(p <0.05)。PLR、NLE、SIRI、SII、BRAF V600E変異、MAP2K1変異を用いて、LCH患者を3群に階層化するリスクモデルを確立した。低リスク、中リスク、高リスク群のそれぞれの50%PFS期間は、到達せず、26か月、14か月(p <0.001)で、すべての群で50%OSに到達していなかった(p <0.001)。【結論】血球数、BRAF V600E変異、MAP2K1変異と組み合わせたリスクモデルは、小児LCHの有望な予後システムである可能性がある。

3)「LErdheim-Chester病患者における非定型骨格病変:CT画像所見」

Atypical skeletal involvement in patients with Erdheim-Chester disease: CT imaging findings.

Zhang Z, et al. Orphanet J Rare Dis. 2022 Feb 3;17(1):34.

【目的】Erdheim-Chester病(ECD)患者のCT画像から非定型骨病変を後方視的に調査する。【方法】ECD患者28例(男性13例、女性15例、年齢:平均45歳[範囲 7~63歳])の全例が胸腹骨盤CT検査を受けた。2人の放射線科医が話し合い、CT画像の非定型骨病変のさまざまな特徴について検討し分析した。【結果】21例に非定型骨病変を認めた。これらの非定型骨病変は、放射線学的にびまん性、結節性、斑状の3タイプに分類された。21例中11例(52%)に脊椎病変があり、びまん性を4例(36%)に、結節性を8例(73%)に、斑状を6例(55%)に認めた。21例中16例(76%)に骨盤病変があり、びまん性を2例(13%)に、結節性を9例(56%)に、斑状を11例(69%)に認めた。21例中7例(33%)に肋骨病変があり、結節性を1例(14%)に、斑状を6例(86%)に認めた。21例中9例(43%)に鎖骨病変があり、びまん性を1例(11%)に、結節性を6例(67%)に、孤立性の斑状を4例(44%)に認めた。21例中10例(48%)に胸骨病変があり、全て結節性であった。【結論】このケースシリーズは、ECDにおいてCT所見で主要な3つの型に分類される非定型骨病変の詳細を提示した。これらの型を理解することで、ECDの診断精度が向上する可能性がある。

4)「アジアの小児における若年性黄色肉芽腫。」

Juvenile xanthogranulomas in Asian children.

Wee LWY, et al. Dermatol Ther. 2022 Feb;35(2):e15224.

若年性黄色肉芽腫(JXG)は、non-LCH織球症の中で最も多い疾患である。全身病変を伴うことは稀である。アジアの小児のJXGに関する文献は少ない。アジアの小児のJXGコホートの疫学、臨床的特徴、全身病変、病理像、転帰を明らかにし、JXGに関する文献を総括することを目的とした。2002年1月~2019年4月に、当院の三次小児科病院でJXGと診断された16歳未満のJXG患者の疫学的、臨床的、病理学的データを後方視的に解析した。計147例の小児JXG患者が同定され、男児がやや優位(53.1%)であった。発症年齢は中央値15.5か月で、69.4%が2歳未満で発症していた。人種の偏位はなかった。最も高頻度の病変部位は、頭頸部領域(44.2%)であった。大部分の患者(76.2%)は、孤発病変であった。57.7%の患者は自然治癒し、治癒までの期間は平均18.8か月であった。治癒する割合と速度は、単一病変と多発病変の児で差はなかった。この研究コホートでは、眼病変は認めなかった。小児のJXGは一般に皮膚限局であり、眼を含む全身病変を伴うことはほとんどない。私たちの研究の結果からは、臨床的に示唆する所見がない限り、多発の皮膚JXG患者であっても、画一的に若年性骨髄単球性白血病あるいは眼や全身病変のスクリーニングをする必要はないと考えられる。

5)「成人LCH患者の治療転帰と予後因子」

Treatment outcomes and prognostic factors of patients with adult Langerhans cell histiocytosis.

Cao XX, et al. Am J Hematol. 2022 Feb 1;97(2):203-208.

成人のLCHについては、十分に明らかになっていない。成人LCHの臨床症状、治療、予後を明らかにするために、新規に診断された266例のLCH患者を後方視的に検討した。診断時の年齢は中央値32歳(範囲:18〜79歳)であった。診断時に、40例が単一臓器孤発型(SS-s)、18例が肺限局型、26例が単一臓器多発型(SS-m)、182例が多臓器型(MS)であった。MS型で最も多い病変臓器は骨(69.8%)で、下垂体(61.5%)、肺(61.0%)がそれに続いた。BRAF V600E変異、BRAF欠失、MAP2K1変異を、それぞれ38.8%、25.4%、19.4%の例に認めた。BRAF欠失は、SS型と比較しMS型でより多く(38.5% vs. 7.1%, p=0.004)、肝病変のある例にも多く認めた(69.2% vs. 14.3%, p<0.001)。3年の全生存率(OS)および無イベント生存率(EFS)の推定値は、SS-mおよびMS型で、それぞれ94.4%、54.7%であった。多変量Cox回帰分析では、診断時に肝臓のある例と脾臓病変のある例はEFSが不良で、一次治療としてシタラビンを含む治療を受けた例と診断時30歳以上の例はEFSが良好であった。リスク臓器病変のある例と診断時50歳以上の例はOSが不良で、シタラビンを含む治療を受けた例はOSが良好であった。したがって、BRAF欠失は、MS型であること、特に肝臓病変があること相関していた。診断時に肝臓または脾臓病変があることは予後不良を示しており、シタラビンを含むレジメンは成人LCH患者の第一選択治療と考えられる。

6)「成人におけるLCH:単一施設の後方視的、症例シリーズ」

Langerhans cell histiocytosis in adults: a retrospective, single-center case series.

Livellara V, et al. Ann Hematol. 2022 Feb;101(2):265-272.

成人ではLCHはまれであり、LCHの診断や治療に関する知識のほとんどは小児での研究から得られたものである。1990年~2020年に、小児科において、小児と同じ手法を用いて治療された63例の成人LCH患者(18-76歳)の臨床所見と治療転帰を後方視的に解析し報告する。41例が単一臓器型(SS)(孤発型34例、多発型7例)、17例が多臓器型(MS)、5例が肺限局型であった。20例が尿崩症を合併していた。孤発性のSS型は、生検/手術後に「待機して経過観察」戦略が推奨された。「特殊部位病変」や多発性のSS型およびMS型には、全身治療が提案された。コホート全体のEFSとOSは、5年でそれぞれ62.2%と100%、10年で52.5%と97.6%であった。3例が治療関連死した。再発率は40%と多く、様々な治療を受けたにもかかわらず、何年にもわたって何回か再発する例が見られた。LCHの病歴は成人と小児で異なる場合があるが、特別な成人用のプロトコルがない場合、成人の症例へ小児で経験された臨床的手法を利用する可能性がある。病変が限局している例は、全身療法なしに良好な予後を示す。小児科で一般的に使用される全身治療を成人に用いる場合、より大きな毒性が潜在的にあることを念頭に置く必要がある。

7)「中枢神経病変を伴う小児LCHに対する二次選択治療」

Second-line regimen for CNS-involved pediatric Langerhans cell histiocytosis.

Lian H, et al. Pituitary. 2022 Feb;25(1):108-115.

【目的】LCHはあらゆる臓器に浸潤する可能性がある。中枢神経系(CNS)浸潤はまれであり、その治療法はよくわかっていない。この研究は、シタラビン(Ara-C)、クラドリビン(2-CdA)、デキサメタゾン(DEX)、ビンデシン(VDS)により二次治療された、中枢性尿崩症(CDI)を伴う小児LCHの治療反応と予後を分析することを目的とした。【方法】この後方視的ケースシリーズ研究は、2012年11月~2018年1月にキャピタル医科大学付属北京小児病院で治療されたCDIを伴う小児LCHを対象とした。一次治療の2009-LCHレジメンにより治療後に、活動性疾患がある、治療反応不良、再発、または、リスク臓器・下垂体・肺病変に有意な改善が見られない例に二次治療が行われた。初発時の臨床所見、臨床反応、有害事象について検討した。【結果】CDIと下垂体後部の高信号の消失を伴う26例の小児LCHが対象となった。二次治療として、「レジメンA」Ara-C + DEX + VDS(n=7)または「レジメンB」Ara-C + DEX + VDS + 2-CdA(n=19)で治療された。CDIのみで下垂体茎肥厚がない例が14例、CDIに下垂体茎肥厚を伴う例が12例であった。CDIのみの例では、レジメンAが行われた4例中4例、レジメンBが行われた10例中3例が改善した。CDIに下垂体茎肥厚を伴う例では、全例で下垂体茎肥厚の改善を認めた。10例において下垂体後葉の高信号が復活した。追跡期間中央値40.5か月で、26例が全て生存していた。化学療法関連死亡はなかった。【結論】Ara-C、2-CdA、DEX、VDSの併用療法は、CNS病変を伴う小児LCHに対して、有害事象は許容範囲で、下垂体病変を部分的に改善させる可能性がある。。

8)「ALK 陽性組織球症: 中枢神経病変とALK阻害への反応を特徴とする新たな臨床病理学的疾患」

ALK-positive histiocytosis: a new clinicopathologic spectrum highlighting neurologic involvement and responses to ALK inhibition.

Kemps PG, et al. Blood. 2022 Jan 13;139(2):256-280.

ALK陽性組織球症は、組織球腫瘍のまれな亜型であり、2008年に肝臓と造血器病変を伴う多臓器型の3例の乳児例が最初に報告された。この疾患はその後、症例報告およびケースシリーズで報告され、KIF5B-ALK融合を高頻度に伴うより広い臨床病理学的疾患となっている。ただし、ALK陽性組織球症の臨床病理学的および分子異常の特徴は、十分には明らかとなっていない。ここでは、これまでのALK陽性組織球症の最も大規模な、ALK再構成が確認された37例を含む39例の詳細な臨床病理学的データの解析結果を報告する。臨床像が異なる3つのグループ、最初に報告されたような肝臓と造血器病変を伴う多臓器型の乳児(グループ1A:6例)、その他の多臓器型の患者(グループ1B:10例)、単一臓器型の患者(グループ2: 23例)が見出された。コホート全体では、19例(49%)に中枢神経病変を認めた(グループ1Bの7例とグループ2の12例)。組織学所見として、約1/3に古典的な黄色肉芽腫の特徴的所見を認めたが、大部分は、細胞密度が高い単調な像を呈し、脂質を蓄えた組織球は見られず、紡錘状または類上皮様の形態が多かった。腫瘍性組織球はマクロファージのマーカーが陽性で、多くの場合、リン酸化されたERKが強発現し、MAPK経路の活性化を裏付けていた。KIF5B-ALK融合が27例で検出され、CLTC-ALK、TPM3-ALK、TFG-ALK、EML4-ALK、DCTN1-ALK融合が1例ずつ確認された。ALK阻害で治療された11例全例に確かな持続する効果が得られ、うち10例は中枢神経病変を認めた例であった。この研究は、既に報告されているALK陽性組織球症の臨床病理学的・分子異常の特徴を明らかにし、この新たな組織球症の臨床指針となる。

9)「外傷によって引き起こされる小児のLCHの骨病変」

RBone lesions of Langerhans cell histiocytosis triggered by trauma in children.

MMorimoto A, et al. Pediatr Int. 2022 Jan;64(1):e15199.

【背景】LCHの骨病変は、外傷によって引き起こされることがある。【方法】JLSG-02研究コホートにおいて、LCHの診断時に骨病変を外傷部位に発症していた小児患者の特徴を後方視的に分析した。【結果】261例の小児LCH患者のうち12例(4.6%)が、診断時に外傷によって引き起こされた骨LCH病変を有し、年齢の中央値は4.9歳で、それ以外の患者よりも有意に高齢であった(P=0.006)。外傷部位は、10例が頭蓋顔面領域、1例が腰椎、1例は骨盤であった。外傷時に、6例はその部位に瘤を認めたが、硬膜外血腫や骨折を呈した例はなかった。外傷から発症までの期間は中央値4週間であった。これらの12例のうち、3例は孤発骨病変、4例は外傷部位の病変を含む多発骨病変、5例は多臓器病変(4例は隣接組織の病変、1例は外傷誘発性の骨病変発症の1年以上前からの多尿症[下垂体後葉病変])であった。治療反応は12例全例で良好で死亡例はなかったが、2例が再発(1例は孤発骨病変、1例は多発骨病変)した。【結論】小児LCH患者の約5%は、診断時に外傷誘発性の骨病変を有し、比較的年長児であった。これらの病変は孤発骨病変として発症するか、または、潜在的にLCHがあり多発骨病変または多臓器病変として現れる。これらの患者では臨床転帰は良好であった。

10)「LCHの耳症状:系統的レビュー」

Otologic Manifestations of Langerhans Cell Histiocytosis: A Systematic Review.

Chen T, et al. Otolaryngol Head Neck Surg. 2022 Jan;166(1):48-59.

【目的】LCHにおける、一般的な耳症状、これらの発生率、診断方法、医学的および外科的対処法を明らかにするための体系的なレビューを実施した。【データソース】PubMed / MEDLINE、Embase、およびCochraneLibrary。【調査方法】1963年~2020年の間に公開されたすべての論文について、PubMed / MEDLINE、Embase、Cochrane Libraryを、下記の検索用語のバリエーションと組み合わせでの検索した:Langerhans細胞組織球症、好酸球性肉芽腫、Letterer-Siwe、Hand-Schuller-Christian、耳炎、耳鼻咽喉科、耳。検索された文献の全ての参考論文のレビューも行った。【結果】631例を含む62の文献が選択基準を満した。246例(39%)に耳症状が発症時に見られ、48%が両側性であった。平均年齢は14.8歳で、男性が優位であった(64%)。最も一般的な耳症状は耳漏(46%)であった。大多数は多臓器型であった(52%)。最も一般的な治療法は化学療法(52%)で、続いて手術(50%)、全身ステロイド(45%)、放射線療法(31%)であった。手術は、単一臓器型の75.8%、多臓器型の50.6%で行われていた。最も効果的な治療法は、放射線療法(奏効率56%、治療を受けた患者の17%)、全身ステロイド(奏効率44%、治療を受けた患者の20%)、化学療法(奏効率41%、治療を受けた患者の21%)、外科療法(奏効率36%、治療を受けた患者の19%)であった。【結論】多臓器型に伴う、または、中枢神経系浸潤のリスクが高い部位の耳病変は、全身治療を必要とする。孤発病変には手術が推奨される。放射線療法は、重要な器官を巻き込む、または、高齢者における、広範な病変にのみ行われるべきである。