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JAPAN ACH STUDY GROUP 日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ

本サイトは、LCHの患者さんやご家族の方々と医師との意見・情報交換の場です。

第38回 最新学術情報

最近掲載されたLCH関連の論文抄録を紹介します。

1)「長骨病変を有する小児LCHの22例におけるX線、CT、およびMRI検査の適用:後方視的検討」

The application of x-ray, computed tomography, and magnetic resonance imaging on 22 pediatric Langerhans cell histiocytosis patients with long bone involvement: A retrospective analysis.

Zhang X, et al, Medicine (Baltimore). 2018 Apr;97(17):e0411.

小児LCH患者においてX線、CT、およびMRIに焦点を当てた研究は少ない。そこで、長骨病変のある小児LCH患者における、X線、CT、およびMRI検査の適用を検討することにした。計22例の小児LCH患者がこの研究の対象となった。 LCHの診断は病理学的検査によりなされた。全例が3年間追跡調査された。 X線、CT、MRI検査が実施され、結果が記録された。22例の小児患者のうち、20例がX線、18例がCT、12例がMRIを用いて長管骨のLCH病変を検査されていた。大腿骨(13例、38.2%)、脛骨(11例、32.4%)、上腕骨(5例、14.7%)、橈骨(4例、11.8%)に病変頻度が高かった。小児LCHにおけるX線、CT、MRIでの長管骨の特徴的な像は、卵形または円形のX線透過性病変、強度の骨膜反応、周囲の軟部組織の腫脹であった。小児LCHの最も多い長管骨病変は大腿骨、脛骨、上腕骨、および橈骨であった。長管骨のX線、CT、MRI検査は、小児LCHの診断に役立つ。

2)「組織球および樹状細胞腫瘍における、MYCやp-STAT3ではなく、p-ERK1/2に関連した細胞シグナル伝達に伴うzeste homolog 2(EZH2)蛋白のエンハンサーの発現」

Expression of enhancer of zeste homolog 2 (EZH2) protein in histiocytic and dendritic cell neoplasms with evidence for p-ERK1/2-related, but not MYC- or p-STAT3-related cell signaling.

Tian X, et al, Mod Pathol. 2018 Apr;31(4):553-561.

EZH2は、翻訳後修飾を介して遺伝子サイレンシングを制御するエピジェネティック制御ポリコーム抑制複合体2 (PRC2)の重要な酵素サブユニットであり、種々の癌腫および造血系腫瘍において過剰発現している。組織球性肉腫、濾胞性樹状細胞肉腫、LCH、指状突起樹状細胞肉腫などの組織球性や樹状細胞性の腫瘍の大多数は、免疫組織化学染色でEZH2を強発現しているのに対して、良性の組織球病変や正常細胞はEZH2を発現していないことから、EZH2がこれらの腫瘍において発がん蛋白として機能している可能性がある。EZH2の発現とEZH2の発現調節にかかわるp-ERK1/2、MYC、p-STAT3の発現の関連を検討したところ、60〜80%の例においてp-ERK1/2の強発現を認め、MYCやp-STAT3の発現を認めるのはごく少数であった。EZH2を強発現する濾胞性樹状細胞肉腫、LCH、組織球性肉腫、指状突起樹状細胞肉腫の、それぞれ、90%、89%、70%、100%がp-ERK1/2を共発現していたが、MYCやp-STAT3を共発現していたのは極わずか(≦30%)であった。これらの知見は、p-STAT3やMYCシグナル伝達経路ではなく、p-ERK1/2シグナル伝達経路が組織球性や樹状細胞性の腫瘍においてEZH2発現を調節していること、EZH2およびp-ERK1/2シグナル伝達経路がこれらの腫瘍の治療標的となることを示唆している。興味深いことに、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍では、EZH2を高発現するのはごくわずかで、p-ERK1/2を共発現しているのは少数のみであったことから、この高悪性度の腫瘍では発がんの機序が異なることが示唆される。

3)「LCHに対する放射線療法後の転帰は病変部位に依存する」

Outcome After Radiation Therapy for Langerhans Cell Histiocytosis Is Dependent on Site of Involvement.

Laird J, et al, Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2018 Mar;100(3):670-678.

【目的】LCHにおける放射線療法の有効性と安全性を検証し、局所再発のリスクがより高い部位があるかどうかを検討する。【患者と方法】1995年から2015年の間に、主に放射線療法で治療されたLCH患者が39例あった。患者は、単一臓器型か多臓器型か、リスク臓器浸潤の有無で分類した。照射された46か所の病変の臨床的および放射線学的反応を、放射線療法後に経時的に評価した。患者の生死、治療、局所の治療効果を、病変部位によって比較した。【結果】放射線療法時の年齢の中央値は35歳(範囲:1.5-67歳)であった。12例の患者が多臓器型で、そのうち5例がリスク臓器浸潤陽性であった。照射された病変部位は、骨が31病変、脳が6病変、皮膚が3病変、リンパ節が3病変、甲状腺が2病変、鼻咽頭が1病変であった。線量の中央値は11.4 Gy(範囲:7.5〜50.4 Gy)であった。追跡期間の中央値は45か月(範囲:6-199か月)で、46病変のうち、局所再発または進行を5病変(11%)に認めた。評価された31の骨病変では局所再発や進行はなかったが、15の骨病変以外の病変では3年時点での局所の非再発・非進行率は63%であった(95%CI 32-83%、p=0.0008)。局所の再発または進行を、皮膚病変の3例中2例、脳病変の6例中2例、リンパ節病変の3例中1例に認めた。39例中5例 (13%)が死亡し、全例が多臓器型の成人であった。【結論】放射線療法はLCHの骨病変の局所制御において安全で有効な手段である。骨病変は低線量の放射線で十分に治療可能であるが、皮膚や脳などの他の組織の病変は高線量の放射線や追加の治療法が必要となる可能性がある。

4)「BRAF V600変異を伴うErdheim-Chester病とLCHに対するベムラフェニブの組織像非依存的第2相非盲検VE-BASKET研究のデータ分析」

Vemurafenib for BRAF V600-Mutant Erdheim-Chester Disease and Langerhans Cell Histiocytosis: Analysis of Data From the Histology-Independent, Phase 2, Open-label VE-BASKET Study.

Diamond EL, et al, JAMA Oncol. 2018 Mar;4(3):384-388.

【重要性】組織球性腫瘍のErdheim-Chester病(ECD)とLCHは、BRAF V600変異の頻度が高く、BRAF V 600キナーゼ阻害剤であるベムラフェニブによる治療効果が示されてきた。しかし、ベムラフェニブの長期的な有効性と安全性はわかっていない。ここでは、VE-BASKET試験に登録されたECDおよびLCH患者におけるベムラフェニブの最終的な有効性および安全性データを解析する。【目的】VE-BASKET試験に登録された成人のECDまたはLCH患者におけるベムラフェニブの有効性と安全性を判定する。【デザイン、設定、および参加者】VE-BASKET試験は、BRAF V600変異を有する悪性黒色腫以外の患者を対象とした、非盲検の非無作為化の多施設共同試験。BRAF V600変異のあるECDまたはLCH患者は、VE-BASKET試験の「他の固形腫瘍」コホートに登録され、本試験に登録された。【介入】患者は、疾患の進行、研究の中止、または、耐え難い副作用が発生するいずれかの時点まで、ベムラフェニブ(960 mg)を1日2回継続して投与された。【主要評価項目】主要評価項目は、充実性腫瘍における奏功評価基準(RECIST、バージョン1.1)による客観的奏効率(ORR)。副次的評価項目は、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、FDG-PET /CT検査を用いた固形腫瘍における修正PETの反応基準(PERCIST)による代謝反応性、安全性。【結果】VE-BASKET試験の計26例の患者(ECD 22例、LCH 4例)が本研究に含まれた(女性14例、男性12例;年齢中央値61歳(範囲51〜74歳))。ORRは、全コホートで61.5% (95%CI、40.6%-79.8%)、ECD患者で54.5% (95%CI、32.2%-75.6%)であった。評価可能な全ての患者は、病状安定または病状改善に達した。追跡期間の中央値は28.8か月であったが、試験終了時にコホート全体ではPFSとOSは50%以上で、2年PFSは86% (95%CI、72%-100%)、2年OSは96% (95%CI、87%-100%)であった。FDG-PET/CT検査によって評価された15例では全例に代謝反応を認め、12例(80%)が完全な代謝反応を示した。コホート全体において、最も一般的な有害事象は、関節痛、丘疹性発疹、疲労、脱毛症、QT延長、皮膚乳頭腫、過角化症であった。高血圧と皮膚関連の有害事象は、転移性悪性黒色腫で報告されたものよりも高頻度であった。【結論と関連性】本研究では、ベムラフェニブはBRAF V600変異を伴うECDおよびLCHの患者において長期の有効性があり、これらの患者に対する新たな標準治療となる可能性がある。

5)「中国南部における、小児の四肢孤発性骨LCHに対する低用量化学療法と手術の比較:症例対照研究」

Comparison between low-dose chemotherapy and surgery for the treatment of extremity-associated solitary bone lesions in children with Langerhans cell histiocytosis in South China: A case-control study.

Li H, et al. J Bone Oncol. 2018 Feb;12:1-6.

【背景】小児の四肢の孤発性骨病変(SBL)-LCHに対する治療は未だ確立していない。小児の四肢のSBL-LCHに対する低用量化学療法と手術療法を比較するため、後方視的な症例対照研究を行った。【患者と方法】2001~15年に我々の施設で治療を受けた小児の四肢のSBL-LCH患者で、43例の低用量化学療法群と、性、年齢、経過観察期間、病変の部位と大きさを一致させた44例の手術対照群を比較した。入院期間(HS)、症状の軽減までの時間(TTSR)、回復期間(RT)、合併症、無再発生存期間(RFS)、健康関連QOL (HRQOL)、および費用対効果を治療別に分析した。【結果】低用量化学療法群のHS、TTSRおよびRTは手術群より短かった(p<0.01)。化学療法関連の合併症として、悪心(16.3%)、アミノトランスフェラーゼ上昇(9.3%)、軽度の脱毛(11.6%)、免疫機能低下(23.3%)、成長遅延(16.3%)、満月様顔貌(9.3%)を認めた。化学療法関連の副作用は軽度で耐容性は良好であった。手術療法群では、病的骨折(6.8%)、器具の緩み(6.0%)、手術部位感染(4.0%)、骨移植の拒絶(9.1%)を認めた。低用量化学療法群では、手術群よりもRFSが長かった(87か月 vs. 59か月、p=0.011)。さらに、低用量化学療法群は手術群と比較し、3か月の追跡調査時点で、身体的、役割的、感情的および社会的機能の項目について、欧州がん研究治療機構QLQ-C30®調査に基づくHRQOLが良好であった(それぞれp<0.001、p=0.001、p<0.001、p=0.003)。しかし、2年の追跡調査時点では、HRQOLスコアは2群間で差はなかった。低用量化学療法群は手術群と比較し、生活の質調整後時間(QALY)当たりの増分費用対効果(ICER)は‐137,030円であった。【結論】手術と比較して低用量化学療法は、回復がより迅速で、侵襲性が低く、安全性が高く、HRQOLが優れており、小児の四肢SBL-LCHの患者に対して、より費用対効果の高い治療法である。

6)「ランゲルハンス細胞腫瘍の悪性形質の根底にはCDKN2A / B欠失とMAPK経路の遺伝子の重複変異がある」

CDKN2A/B Deletion and Double-hit Mutations of the MAPK Pathway Underlie the Aggressive Behavior of Langerhans Cell Tumors.

Xerri L,et al, Am J Surg Pathol. 2018 Feb;42(2):150-159.

LCHは通常予後良好であるが、ランゲルハンス細胞肉腫(LCS)は悪性度が高い腫瘍である。どのような遺伝子変化がランゲルハンス細胞増殖の悪性形質の根底にあるかは依然として不明である。同一患者での異なる再発時期のLCSの検体と、異なるLCH患者の22検体を、次世代シクーエンサーとアレイCGH法を用いて解析した。 3回目のLCS再発は、B細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL)とLCS成分の両方を含む複合腫瘍であった。LCHの22検体は大部分が骨由来であり、典型的な組織像であった。アレイCGH解析では、LCSの3検体全てにおいて、CDKN2A/B遺伝子座に影響を及ぼす類似のホモ接合体性欠失を認めたが、解析可能であったLCHの17検体では異常は検出されなかった。LCSの3検体において行った495の癌遺伝子の次世代シークエンシングによるターゲットシークエンスでは、KMT2D/MLL2変異や、MAP2K1NRAS遺伝子の重複変異を検出したが、BRAF変異は検出しなかった。 LCSの2検体でNOTCH1変異を認めた。LCSとB-CLLは同じ遺伝的プロファイルを示した。LCH検体では相互排他的なBRAF(8/20)とMAP2K1(4/19)変異を認めたが、KMT2DNRASNOTCH1に変異は認めなかった。これらの結果は、CDKN2A/B欠失やMAP2K1とNRASの重複変異がランゲルハンス細胞腫瘍の悪性形質の根底にあることを示し、組織球性腫瘍における悪性化の診断に有用でることを示唆している。MAPK経路の「ダブルヒット」プロファイルは、LCS患者に対する分子標的療法を考えるうえで重要な情報である。

7)「小児LCHにおけるBRAF V600E変異特異的免疫組織化学の使用」

The use of BRAF V600E mutation-specific immunohistochemistry in pediatric Langerhans cell histiocytosis.

Ballester LY, et al, Hematol Oncol. 2018 Feb;36(1):307-315.

BRAF p.V600E変異は、小児LCH病変の50%以上で検出される。しかし、小児LCHにおいて遺伝子検査の代替としての変異特異的BRAF V600E免疫組織化学(IHC)が使用できるかは明らかではない。変異特異的リアルタイムPCRを使用して、26例の小児患者(男性14例、女性12例、年齢7か月〜17歳)のホルマリン固定パラフィン包埋LCH検体において、変異特異的BRAF V600Eモノクローナル抗体(クローンVE1)を試し、検出限界0.5%のリアルタイムPCR法を比較対照とした。BRAF VE1染色を、強度(0〜3 +)および免疫反応性腫瘍細胞の百分率(0%〜100%)の両方でスコア化した。BRAF VE1免疫反応性を寛容基準(≧1 +、≧1%)と厳格基準(≧2 +、≧10%)の両方で評価した。寛容基準では、変異特異的リアルタイムPCRと比較し、IHCの感度および特異度は、それぞれ100%および18.2%であった。IHCでは、BRAF変異陽性・陰性ともに弱陽性1+に染色されるため、寛容基準では特異性は低くなった。厳密基準を用いると、感度は80%に低下したが特異度が100%に向上した。厳格基準では、3例が偽陰性となったが、全例、LCH細胞が染色切片の5%未満、または、脱灰した標本であった。結論として、高感度遺伝子解析は、パラフィン包埋LCH組織を用いたBRAF変異解析において最も標準的な方法である。偽陽性を避けるためには、10%以上のLCH細胞がある組織において染色強度2+の明白なVE1染色陽性所見が必要である。しかし、VE1染色陰性の場合、偽陰性を否定するための追加検査を必要となり、厳格基準はLCH細胞が少ない標本や脱灰標本には適さないかもしれない。

8)「Erdheim-Chester病によって、著しいテント下病変を伴う成人白質脳症が引き起こされる可能性」

Adult leukoencephalopathies with prominent infratentorial involvement can be caused by Erdheim-Chester disease.

Chiapparini L, et al. J Neurol. 2018 Feb;265(2):273-284.

【背景】小脳と脳幹の著明な白質脳症(PIL)は、様々な遺伝性および後天性白質疾患により生じる。 Erdheim-Chester病(ECD)は、まれな非ランゲルハンス細胞組織球症であり、通常は成人PILの原因としては考慮されることはない。【方法】原因不明の散発性PILの成人患者10例の臨床および検査所見から、ECDである可能性を検討した。【結果】男性7例、女性3例で、発症時の平均年齢は49.6歳(範囲:38〜59歳)、他の神経学的症状の有無にかかわらず小脳性運動失調症が唯一または主な臨床症状で、尿崩症を3例に認めた。 8例は、テント下白質病変に加えて、テント上の巣状白質異常も認めた。8例中6例は脊髄病変も認めた。2例では胸腹部CTで大動脈周囲鞘形成を示し、5例では全身FDG-PET検査で下肢の長管骨でグルコース取込み増加があり、1例では脳FDG-PET検査でテント下での明白な代謝亢進を示した。8例において、骨シンチグラフィーや病理検査により、ECDであることが確認された。ベムラフェニブで治療された2例のECD患者は、1年の追跡調査で、神経学的症状および脳MRI異常の著しい改善が得られた。【結論】PILの症状が唯一のECDの臨床症状である例もある。原因不明のPILの成人患者では、骨シンチグラフィーおよび全身FDG-PET検査によりECDの鑑別をすべきである。生命を脅かす疾患であるが、早期診断により、病状を改善させる治療の開始が可能となる。

9)「ドロップレットデジタルPCRによる肺LCHの生検組織および気管支肺胞洗浄液中のBRAF V600E変異の評価」

Assessment of BRAF V600E mutation in pulmonary Langerhans cell histiocytosis in tissue biopsies and bronchoalveolar lavages by droplet digital polymerase chain reaction.

Pierry C, et al, Virchows Arch. 2018 Feb;472(2):247-258.

肺LCHが腫瘍性かどうかはまだ結論が出ていない。現在、肺LCH患者においては、BRAF V600EおよびMAP2K1変異が検出されるかどうかによって腫瘍性かどうかが評価されているため、デジタルドロップレットPCR (ddPCR)によってこれを検討した。後方視的に、肺LCHの組織42検体と気管支肺胞洗浄液(BAL)18検体で、ddPCR、免疫組織染色、高分解能融解(HRM)PCR、および次世代シーケンシング(NGS)により、BRAF V600E変異が検出できるか解析した。各方法の特異性および感度を評価するために、BRAF V600E変異を少なくとも2つ方法によって評価した。ddPCRでは18/41例で、HRM PCRでは10/36例で、NGSでは16/31例でBRAF V600E変異が検出された。BRAF V600E免疫組織染色の感度は94%、特異度は79%であった。HRM PCRの感度はわずか59%、特異度は100%であった。解析可能な症例(31例)ではNGSの感度と特異度は100%であったが、解析不能な例が11例あった。 ddPCRによる解析で、組織とBALともにBRAF V600E変異陽性が1例、組織とBALともにBRAF V600E変異陰性が2例、組織はBRAF V600E変異陽性でBALはBRAF V600E変異陰性が4例であった。この結果は、肺LCH診断の精度を高めるために、組織やBAL検体においてBRAF変異の状態をddPCRで評価することが有用であることを裏付けている。

10)「RAF/MEK/ERK経路は樹状細胞の遊走を抑制し、樹状細胞をLCH病変部位に捕捉する」

RAF/MEK/extracellular signal-related kinase pathway suppresses dendritic cell migration and traps dendritic cells in Langerhans cell histiocytosis lesions.

Hogstad B, J Exp Med. 2018 Jan 2;215(1):319-336.

LCHは、MAPキナーゼシグナル伝達経路が恒常的に活性化したう病的CD207陽性樹状細胞の浸潤を伴う肉芽腫性病変を特徴とする、炎症性骨髄性腫瘍である。LCH患者の約60%は、病変部のCD207陽性樹状細胞にBRAF V600E変異を認める。しかし、病変部にBRAF V600E変異陽性のLCH細胞が集簇する機序は不明である。ここでは、BRAF V600Eによって誘導される持続的なERK活性化が、C-Cモチーフケモカイン受容体7(CCR7)を介した樹状細胞の遊走を阻害して、樹状細胞を病変部位に捕捉することを示す。さらに、BRAF V600Eは樹状細胞にBCL2様タンパク質1(BCL2L1)の発現を増加させ、アポトーシス耐性をもたらす。薬理学的MAPキナーゼ阻害によって、ヒトLCH細胞ならびにマウスLCHモデルにおいて、遊走能およびアポトーシスは回復する。また、MEK阻害剤を添加したナノ粒子により薬物送達を食細胞へ集中させることが可能で、標的外の毒性を大幅に減少させることが可能である。まとめると、MAPキナーゼは、樹状細胞の遊走を厳しく抑制し、かつ、樹状細胞の生存を増強し、その結果、LCH病変に樹状細胞が捕捉され細胞死に抵抗性になることを示している。