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JAPAN ACH STUDY GROUP 日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ

本サイトは、LCHの患者さんやご家族の方々と医師との意見・情報交換の場です。

第51回 最新学術情報

最近掲載されたLCH関連の論文抄録を紹介します。

1)「LCHにおける小さなBRAF欠失を検出するためのカスタムパイロシークエンス解析」

Custom pyrosequencing assay to detect short BRAF deletions in Langerhans cell histiocytic lesions.

Jouenne F, et al. J Clin Pathol. 2021 Aug;74(8):533-536.

LCHは、BRAFi>V600E変異やBRAF欠失などのMAPキナーゼシグナル伝達経路の活性化変異によって引き起こされる、まれな炎症性骨髄腫瘍である。次世代シークエンスと全エクソームシークエンス(WES)は、BRAF欠失の検出に有用な強力な手法であるが、これらには費用と時間がかかる。パイロシークエンスは、遺伝子欠失を迅速かつ確実に検出できる可能性のある代替方法である。BRAFエクソン12の欠失を検出するカスタムパイロシークス解析を開発し、成人LCH患者の18個の生検組織において、サンガーシークエンスとWESを併用して遺伝子型を決定した。BRAF欠失は、WES、パイロシークエンス、サンガーシークエンスによって、それぞれ7/18(39%)、6/18(33%)、3/18(17%)のLCH組織で検出され、WESとパイロシークエンスの結果はよく一致していた(Kappa係数=0.88)。したがって、パイロシークエンス解析は信頼性が高く、BRAF欠失の検出に役立ち、特に、分子標的治療を必要とするBRAFV600E陰性LCH例において有用である。

2)「胆汁うっ滞や硬化性胆管炎、肝線維症を続発するLCH患者にはBRAF(V600E)変異が高頻度である」

High prevalence of BRAF(V600E) in patients with cholestasis, sclerosing cholangitis or liver fibrosis secondary to Langerhans cell histiocytosis.

Carrere X, et al. Pediatr Blood Cancer. 2021 Jul;68(7):e29115.

MAPK阻害剤を用いた分子標的療法は、LCH患者の臨床症状を改善させることが証明されている。LCHに化学療法耐性の胆汁うっ滞や硬化性胆管炎、肝線維症を伴う患者のコホートにおいてBRAFV600E変異の有無を解析した。13例すべてで、LCH診断のための生検組織(皮膚または骨)または肝生検組織のいずれかにおいて、BRAFV600E変異を検出した。このように、進行性肝疾患や肝晩期合併症、肝移植を必要とする患者では、LCH診断時の生検組織(皮膚またはび骨)または肝生検組織のいずれかにおいて、BRAFV600E変異が100%に認められた。

3)「造血細胞起源の組織球肉腫および樹状細胞肉腫は、濾胞状樹状細胞肉腫とは異なる、治療標的となる遺伝子変異を共有している」

Histiocytic and Dendritic Cell Sarcomas of Hematopoietic Origin Share Targetable Genomic Alterations Distinct from Follicular Dendritic Cell Sarcoma.

Massoth LR, et al. Oncologist. 2021 Jul;26(7):e1263-e1272.

【背景】組織球および樹状細胞腫瘍は、単球または樹状細胞系統から生じる多様な腫瘍である。LCHとErdheim-Chester病の遺伝子変異の特徴はわかってきたが、この幅広い疾患群における、それ以外の頻度が低く侵攻性であることが多い腫瘍については、未だ十分に特徴付けがされておらず、WHOの診断カテゴリーにおいて比較研究が十分ではない。【方法】悪性組織球および樹状細胞腫瘍の主要な4つのサブタイプ、44例の濾胞状樹状細胞肉腫(FDCS)、41例の組織球肉腫(HS)、7例の指状嵌入樹状細胞肉腫(IDCS)、10例のランゲルハンス細胞肉腫(LCS)を含む、計102例の腫瘍検体において、ハイブリダイゼーションキャプチャー法によって、406個の癌関連遺伝子の変異解析を行った。【結果】102例のコホート全体の中で、最も高頻度の変異はCDKN2A変異で32%の症例にみられ、次いでTP53変異(22%)が多くみられた。MAPキナーゼ経路の変異は、悪性組織球症(M)グループ(HS、IDCS、LCS)に高頻度に認められたが、FDCSには認めなかった(72% vs. 0%; p<0.0001)。対照的に、NF-κB経路の変異はFDCSで高頻度に認めたが、Mグループの組織球症ではまれであった(61% vs. 12%; p<0.0001)。腫瘍の遺伝子変異数は、FDCSと比較してMグループの組織球症で有意に多かった(中央値4.0/Mb vs. 2.4/Mb; p=0.012)。また、再発し分子標的療法で治療された二次性組織球肉腫の小児患者において、治療抵抗性の機序を解明するために行った遺伝子解析についても述べる。【結論】計42例(41%)の腫瘍において、既に承認済または研究中の分子標的薬が使える可能性のある病原性変異が認められた。この研究結果は、正確な腫瘍分類を可能にし、発がんドライバー変異の候補を特定し、これらの侵攻性腫瘍患者に個別化された治療オプションを見出すことから、遺伝子変異解析は価値があることを示している。

4)「不確定細胞組織球症におけるCD1分子およびコロニー刺激因子1受容体の発現」

Expression of CD1 molecules and colony-stimulating factor 1 receptor in indeterminate cell histiocytosis.

Kinoshita M, et al. J Dermatol. 2021 Jul;48(7):1086-1089.

不確定細胞組織球症(ICH)およびLCHは、病因が不明なまれな組織球症である。しかし、両者の腫瘍細胞はいくつかのランゲルハンス細胞(LC)の免疫表現型の特徴を呈し、CD1aを発現している。最近のトランスクリプトーム解析により、末梢血のCD1c陽性の骨髄性樹状細胞がLCH腫瘍細胞の前駆細胞である可能性が明らかになった。LCはCD1aとCD1cを発現するが、CD1bは発現しない。LCと同様に、ICHとLCHの両者の腫瘍細胞はCD1cを発現しているが、CD1bは発現していないことを見出した。さらに、LCと同様に、両者の腫瘍細胞はコロニー刺激因子1受容体(CSF-1R)を発現していた。LCの分化と生存のために、IL-34/CSF-1Rシグナルが重要な役割をしていることを考慮すると、両者の腫瘍細胞に発現するCSF-1Rは、生体内で腫瘍細胞の生存と増殖を促進している可能性がある。これらのデータは、ICHとLCHが、LCと免疫表現型の特徴を共有しているという事実を裏付ける更なる証拠となる。さらに、ICHとLCHの腫瘍細胞は、IL-34を介したCSF-1Rシグナル伝達を介して生存および増殖する可能性を提唱する。

5)「サイクリンD1:LCHのマーカーとして有用である可能性」

Cyclin D1: potential utility as marker for Langerhans cell histiocytosis.

Ben Rejeb S, et al. J Immunoassay Immunochem. 2021 Jul 4;42(4):370-379.

LCHは、病因が不明なまれな疾患である。診断は、CD1a陽性組織球の浸潤の同定に基づいてなされる。LCHでは、MAPキナーゼ経路の活性化が常にみられるため、サイクリンD1などの下流マーカーがLCHの有用なマーカーとなる可能性がある。LCHにおけるサイクリンD1の発現を検討することを、この研究の目的とした。LCHと確定された16例において、サイクリンD1の免疫組織化学的発現(クローンSP4-R)を検討した。核でのサイクリンD1の発現を、弱、中等、強の3段階で評価し、2人の病理学者によって結果を判定した。陽性の割合を評価した。患者の年齢は平均13.7歳で、男女比は1:3であった。最も多い病変部位は骨(9例; 56.3%)で、次にリンパ節(5例; 31,2%)、皮膚(2例; 12.5%)であった。すべての症例で、様々な程度で核にサイクリンD1の発現を認めた。7例(43.8%)が中等度、9例(56.2%)が強度と判定された。サイクリンD1陽性細胞の割合は、13例で>50%、3例で<50%であった。様々な病変部位の全てのLCHの症例がサイクリンD1を発現することが明らかになった。このことは、LCHにおいてMAPキナーゼ経路が活性化していることに起因している可能性がある。反応性のランゲルハンス細胞増殖では、サイクリンD1は有意な発現は認めない。したがって、サイクリンD1の免疫組織化学染色は、診断マーカーとして、またLCH類似の非腫瘍性異常を除外するのに有用であるだろう。

6)「次世代シークエンス解析による小児LCH患者におけるBRAFV600E変異の検出頻度」

Frequency detection of BRAF V600E mutation in a cohort of pediatric langerhans cell histiocytosis patients by next-generation sequencing.

Feng S, et al. Orphanet J Rare Dis. 2021 Jun 11;16(1):272.

【背景】LCHは、小児も成人も発症するまれな腫瘍性疾患であり、BRAFV600E変異が最大64%の患者で検出される。いくつかの研究で、BRAFV600E変異と臨床所見や経過との関連が議論されているが、小児患者においてこの変異の臨床的重要性に関して明確な結論は出されていない。【結果】148例の小児LCH患者の臨床情報を取得し、次世代シークエンスのみ、または、ddPCRを併用してBRAFV600E変異を検索した。全体のBRAFV600E変異陽性率は60/148(41%)であった。用いた検体の種類(末梢血およびホルマリン固定パラフィン包埋組織)によって、BRAFV600E変異の検出率に有意な差がみられた(p=0.000および0.000)。分子標的療法を受けた例では再発率が低かった(p=0.006; ハザード比0.164、95%CI:0.046-0.583)。しかし、BRAFV600E変異の有無は、性別や年齢、病期、浸潤臓器、TP53変異の有無、病変部の腫瘤形成、再発と関連していなかった。【結論】これは、これまでに中国人集団を対象に実施された最大の小児LCH研究である。LCHのBRAFV600Eは、年齢にかかわらず、東アジア民族では他の民族よりも頻度が低い可能性がある。末梢血cell free DNAのすべてが腫瘍性であるとは限らないため、生検組織のほうがBRAF変異スクリーニングとしてより感度が高い。タイプIおよびIIのエラーを回避するために、変異スクリーニングには、検出限界が低く感度が高い手法が推奨される。

7)「小児LCHの長期転帰、臨床経過、治療法:ギリシャの高度医療施設からの報告」

Long-term outcome, clinical course and treatment approaches of paediatric langerhans cell histiocytosis: A greek reference centre report.

Tzotzola V, et al. Acta Paediatr. 2021 Jun;110(6):1944-1951.

【目的】LCHは、多様な臨床像を呈する炎症性骨髄腫瘍である。ギリシャの高度医療施設で治療された小児LCHの臨床経過、治療、長期転帰について分析した。【方法】1974年~2020年にギリシャの高度医療施設において診断されたLCHの小児66例を後方視的に解析した。【結果】年齢は中央値3.9歳(範囲0.0-15.9)で、39例が孤発の単一臓器型、6例が多発の単一臓器型、7例がリスク臓器浸潤陰性の多臓器型、14例がリスク臓器浸潤陽性の多臓器型であった。追跡期間の中央値4.1年(範囲0.5-27.7)で、晩期合併症である臨床的神経変性症や中枢性尿崩症はみられなかった。10年間の無イベント生存率と全生存率はそれぞれ65.0%と90.3%であり、45年間で大幅に改善していた。生存率は、多臓器型よりも単一臓器型の方が良好であった。BRAF V600E変異は、検査を受けた14例中8例で陽性であった。再発は12/66例(18.2%)で認め、このうち11例が寛解し、1例が2回目の再発後に死亡した。【結論】LCH生存率は、年次経過で大幅に改善していた。再発は18.2%にみられたが、晩期の神経変性症はみられなかった。単一臓器型と多臓器型の予後の違いが確認された。

8)「LCHにおける免疫微小環境:予後指標となる可能性」

Immune Microenvironment in Langerhans Cell Histiocytosis: Potential Prognostic Indicators.

Feng C, et al. Front Oncol. 2021 May 7;11:631682.

LCHの免疫微小環境を明らかにし、免疫指標によって重症度を予測できるかどうかを検討した。54例の治療歴のない患者の血清検体を用い、寛解導入療法の前後で、炎症性サイトカインおよび免疫グロブリンを定量的に分析した。治療前の血清sIL-2R、TNF-α、IL-10は、リスク臓器浸潤陽性型では、単一臓器型に比べ有意に高かった。sIL-2R、TNF-α、IL-10、およびIL-1βは、造血器病変のある例では、ない例と比べ有意に高かった。sIL-2R、TNF-α、IL-10は、肝臓または脾臓病変のある例で高かった。寛解導入療法後、Th細胞は肝臓病変あり群および脾臓病変あり群で減少し、Ts細胞は治療無反応群で有意に減少した。血清の免疫指標は、ある程度、疾患の重症度を反映している。適切な臨床検査は、よりよいリスク層別化や免疫療法の導入に役立つ可能性がある。

9)「骨LCHの誤診を減らす助けとなる画像所見:後方視的研究」

Radiologic findings that aid in the reduction of misdiagnoses of Langerhans cell histiocytosis of the bone: a retrospective study

Zhao M, et al. World J Surg Oncol. 2021 May 10;19(1):146.

【背景】骨LCHの診断のための特徴的な放射線画像所見を明らかにすることを目的とした。【方法】病理学的に診断された骨病変を伴うLCH 82症例を後方視的に検討した。患者の臨床および放射線画像所見の特徴を分析した。【結果】64例に孤発、18例に多発の骨病変を認めた。孤発骨病変を伴うLCHにおいては、病変の37.5%(24/64例)はが頭蓋骨にみられ、骨破壊を呈し軟部組織腫瘤を伴う例もあった。これらの病変の正しい診断率は、小児および青年期では60.0%(9/15例)であったが、成人では22.2%(2/9例)のみであった。孤発病変の26.5%(17/64例)は脊椎にみられた。このうち88.2%(15/17例)は圧潰の程度は様々な椎体病変で、このうち66.7%(10/15例)は正しく診断されていた。孤発病変の21.8%(14/64例)は他の扁平骨や不規則形骨にみられ、骨溶解を呈した。このうち21.4%(3/14例)のみが正しく診断されていた。孤発病変の14.1%(9/64例)が長幹骨にみられた。このうち77.8%(7/9例)は骨幹に位置し、中心骨破壊を呈し紡錘状骨膜反応や広範な末梢浮腫を伴う例もあり、このうち42.9%(3/7例)は手術や生検の前に正しく診断されていた。複数の骨破壊性病変を伴うLCHにおいては、小児および青年期では71.4%(10/14例)が正しく診断されていた。しかし、成人の4例は全てが誤診されていた。【結論】全ての年齢層において、紡錘状骨膜反応および広範な末梢浮腫を伴う長幹骨の孤発性の骨幹破壊、脊椎の扁平椎、縁が面取りされた軟部組織腫瘤を伴う頭蓋骨欠損は、LCH診断を強く示唆する。さらに、小児および青年期の多発性の溶骨病変は、LCH診断を強く示唆する。誤診を減らすには、LCHのこれらの典型的な画像所見に精通している必要がある。

10)「BRAF(V600E)によって誘発される老化は、LCHの病態を促進する」

BRAF(V600E)-induced senescence drives Langerhans cell histiocytosis pathophysiology.

Bigenwald C, et al. Nat Med. 2021 May;27(5):851-861.

LCHは、MAPK経路の遺伝子に活性化変異(特にBRAFV600E変異)をもつ特徴的なクローン性単核貪食細胞(MNP)を伴う肉芽腫性病変を特徴し、致死的となりえる疾患である。最近、多臓器型LCHにおいては、多分化能をもつ造血前駆細胞にもBRAFV600E変異がみられることを見出した。造血前駆細胞におけるBRAFV600E変異がどのようにLCH発症につながるかは不明である。ここでは、幼若マウスやヒトの多分化能のある造血前駆細胞にBRAFV600E変異を強制発現させると、造血前駆細胞に分裂停止、アポトーシス抵抗性、老化関連分泌表現型(SASP)と言った老化プログラムを誘発することを示した。そして、SASPは、造血前駆細胞が単核貪食細胞系統への偏った分化を促進し、組織内に老化した単核貪食細胞が蓄積し、LCH病変が形成された。INK-ATTACトランスジェニックマウスを用いた老化細胞の除去、および薬理学的なSASPの遮断によって、マウスのLCHは改善した。これらの結果は、老化細胞がLCHの治療の新しい標的であることを示している。