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JAPAN ACH STUDY GROUP 日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ

本サイトは、LCHの患者さんやご家族の方々と医師との意見・情報交換の場です。

第2回 最新学術情報(2005.4)

最近掲載されたLCH関連の論文抄録を紹介します。

1)LCHの骨病変のみならず非骨病変にも破骨細胞様の多核巨細胞が存在する

Presence of osteoclast-like multinucleated giant cells in the bone and nonostotic lesions of Langerhans cell histiocytosis.

da Costa CE et al. J Exp Med. 2005 Mar 7;201(5):687-93.

LCHは、単一あるいは多臓器に、CD1a陽性のランゲルハンス様細胞や他のいくつかの骨髄系細胞の集族を特徴とする疾患である。集族している細胞の中のひとつに多核巨細胞があるが、その正確な由来やLCHにおける役割は、いまだ明らかではない。この研究では、3つの異なる病変部位、つまり骨・皮膚・リンパ節において、多核巨細胞が、破骨細胞に特徴的なマーカー(tartrate-resistant acid phosphataseやvitronectin receptor、cathepsin K、matrix metalloproteinase-9)を発現していることを明らかにした。骨病変においては、破骨細胞様多核巨細胞はCD68のみ陽性であったが、骨以外の病変では、CD1aも同時に陽性であった。病変部位のCD1a陽性LCH細胞やT細胞によってRANKLやM-CSFのような破骨細胞を誘導するサイトカインが産生され、破骨細胞様多核巨細胞が生じてくると考えられる。破骨細胞由来の酵素は組織破壊の主役となることと、すべてのLCH病変において多核巨細胞が破骨細胞様の性格を持っていたことから、これらの多核巨細胞はLCH治療の標的となりうると考えられる。

2)LCHにおいては末梢血中の骨髄系樹状細胞の増多と樹状細胞誘導サイトカインの上昇がみられる

Increased blood myeloid dendritic cells and dendritic cell-poietins in Langerhans cell histiocytosis.

Rolland A et al. J Immunol. 2005 Mar 1;174(5):3067-71.

かつてはヒスチオサイトーシスXと呼ばれていたLCHは、原因は不明の反応性にランゲルハンス細胞が増多する疾患である。現在の治療は、非特異的な免疫抑制療法を基本としている。ランゲルハンス細胞やマクロファージを含む多くの抗原提示細胞が病変形成にかかわっている。そこで我々はLCHが骨髄系前駆細胞細胞の疾患であると推測した。我々は、分化抗原陰性・HLA-DR陽性・CD11c陽性で、ランゲルハンス細胞にもマクロファージにも分化可能な樹状前駆細胞が、LCH患者の末梢血中に有意に増加(P=0.004)していることを発見した。24例のLCH患者の血清中サイトカインを調べたところ、FLT3リガンド(樹状細胞動因因子)やM-CSFといった造血に作用するサイトカインが有意に上昇していた(それぞれ正常の約2倍と約4倍)。進行性病変をもつLCH患者においては、これらのサイトカインはより高値であった。血清中FLT3リガンドとM-CSF値は、広範囲の皮膚病変や多臓器病変を持つ高リスクのLCH患者において最も高値であった。さらに、複数の骨病変をもつLCH患者ではM-CSFと幹細胞因子は比較的高値であった。このように、初期造血にかかわるFLT3リガンドや幹細胞因子、M-CSFといったサイトカインはLCHの病理に深く関わっていると考えられ、新たな治療標的となる可能性がある。

3)LCHにおいては、腫瘍壊死因子、インターロイキン11、白血病抑制因子がLCH細胞により産生される

Tumor necrosis factor, interleukin 11, and leukemia inhibitory factor produced by Langerhans cells in Langerhans cell histiocytosis.

Andersson By U et al. J Pediatr Hematol Oncol. 2004 Nov;26(11):706-11.

【目的】LCHの病因や病態生理は未だ明らかではない。小児の多臓器病変を持つLCH患者の3年生存率はいまだ80%前後で、肝臓や脾臓・造血器・肺といった危険臓器に病変がある小児LCH患者の予後はさらに悪い。LCHの病因を解明し治療法を確立するために、我々は、LCH病変の生検検体において腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン11(IL-11)、白血病抑制因子(LIF)の細胞内の産生を調べた。【方法】9例の小児LCH患者から吸引針生検によって病変部位の細胞を採取した。サイトカインが結合している細胞とサイトカイン産生細胞を区別することが可能な免疫蛍光染色法を用いて実験を行った。【結果】すべての患者においてTNFを発現する組織球を認めた。9例中7例の患者においてIL-11を、6例においてLIFを発現する組織球を認めた。TNFの発現が最も高い組織球を認めた2例の患者、IL-11・LIFの発現が最も高い組織球を認めた3例の患者は、いずれも危険臓器に病変があった。2重染色によってTNF・IL-11・LIFを発現している組織球は同時にCD1aも発現していることが明らかとなった。【結論】これらの結果より、LCHはサイトカイン、特にTNF・IL-11・LIFが深く関わる病態と考えられる。これら3つのサイトカインはいずれも破骨細胞を誘導する働きがあり、LCHにおける骨融解病変の病因となっていることが示唆される。さらに、LCHにおける血小板増多は、IL-11やLIFの作用によるかもしれない。

4)LCHにおけるEBウイルスの発現

Expression of Epstein-Barr virus in Langerhans' cell histiocytosis.

Shimakage M et al. Hum Pathol. 2004 Jul;35(7):862-8.

LCHは病因不明の組織球増殖疾患である。我々は先に、EBウイルスがマクロファージに感染し増殖することを報告した。今回、EBウイルスがLCHの病因に関わるかを検討した。EBウイルスの発現を検討するため、17例の患者のパラフィン切片において、EBウイルスBamHIW・EBNA2・EBER1の配列をmRNA組織中ハイブリダイゼーション法により、EBNA2・LMP1・BZLF1を間接免疫蛍光染色法により調べた。EBウイルスDNAを検出するため、PCR-サザンブロト法を用いた。全例で組織中ハイブリダイゼーション法によるBamHIW mRNAは陽性であった。また、EBNA2 mRNAは13例で、EBER1 mRNAは14例で陽性であった。さらに、モノクローナル抗体による免疫蛍光染色は、ほとんど全例でEBNA2とBZLF1に対し陽性で、15例でLMP1に対し陽性であった。調べた9例全例でPCR-サザンブロット法によるEBER1配列は陽性であった。組織ハイブリダイゼーション法と免疫蛍光法により、LCHの病変部位においてEBウイルスが発現していることが明らかとなった。さらに、EBウイルスDNAはPCR-サザンブロット法によっても検出された。BZLF1が陽性であったことより、LCH病変部位においてEBウイルスが複製されていると考えられる。