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JAPAN ACH STUDY GROUP 日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ

本サイトは、LCHの患者さんやご家族の方々と医師との意見・情報交換の場です。

第24回 最新学術情報(2014.7)

最近掲載されたLCH関連の論文抄録を紹介します。

1)「LCHの臨床的特徴および治療成績:韓国の組織球症作業部会による全国調査」

Clinical features and treatment outcomes of Langerhans cell histiocytosis: a nationwide survey from Korea histiocytosis working party.

Kim BE, et al. J Pediatr Hematol Oncol. 2014 Mar;36(2):125-33.

韓国の小児LCH患者の臨床的特徴と治療成績を明らかにするため、全国調査を実施した。韓国の組織球症作業部会は、1986年から2010年の間に韓国内の28施設でLCHと診断された603例のデータを分析した。診断時の年齢の中央値は65か月(0~276か月)であった。浸潤臓器として、骨が最も頻度が高く(79.6%)、次いで、皮膚(19.2%)であった。診断時の病型は、419例(69.5%)が単一臓器型(SS型)、85例(14.1%)がリスク臓器浸潤陰性の多臓器型(MS-RO-)、99(16.4%)がリスク臓器浸潤陽性の多臓器型(MS-RO+)であった。SS、MS-RO-、MS-RO+群の5年全生存率(OS)は、それぞれ99.8%、98.4%、77.0%で(p<0.001)、5年の再燃率は、それぞれ17.9%、33.5%、34.3%(p <0.001)であった。OSは、MS-RO+群(p =0.025)、初期治療反応不良群(p=0.001)で有意に低くかった。多臓器型は、再燃の独立した危険因子であった(p=0.036)。99例(16.4%)に不可逆的障害を認めた。再燃、多臓器型、診断時年齢2歳以下が、不可逆的障害の発生と関連していた。この研究から、MS-RO+群の生存率改善および2歳以下の多臓器型患者の再燃率減少のため、一層の努力が必要であることが明らかとなった。

2)「LCH、若年性黄色肉芽腫およびRosai-Dorfman病を含む難治性多発性組織球症に対するクロファラビンによる救済療法」

Clofarabine salvage therapy in refractory multifocal histiocytic disorders, including Langerhans cell histiocytosis, juvenile xanthogranuloma and Rosai-Dorfman disease.

Simko SJ, et al. Pediatr Blood Cancer. 2014 Mar;61(3):479-87.

【背景】LCH、若年性黄色肉芽腫(JXG)、およびロサイ・ドーフマン病(RDD)を含む、再発または難治性の組織球症に対する既存の治療の有効性は限られている。再発または難治性の小児の組織球症(LCH 11例、全身型JXG 4例、RDD 3例)に対するクロファラビンによる治療経験を報告する。【方法】2011年5月から2013年1月にテキサス小児病院においてクロファラビンで治療を受けたLCH、JXG、RDD患者の治療反応性と毒性について検討した。【結果】患者は、クロファラビンでの治療前に、おおむね3つの化学療法レジメンで治療を受けていた。クロファラビンは、典型的には25mg/ m2/日で5日間投与された。28日間隔におおむね6サイクル(2~8サイクル)投与された。18例中17例が生存している。生存例は全て、2~4サイクル後に改善を認め、11例(61%)が完全寛解、4例(22%)が部分寛解、2例が治療継続中であった。5例が再燃したが、そのうち3例は、その後、寛解した。JXGとRDDの全例は、治療終了時に完全または部分寛解となった。全例で好中球減少症を認めた。好中球減少の遷延、激しい嘔吐、細菌感染が、繰り返し散発性に認められた。【結論】クロファラビンは、すでに多くの治療を受けているLCH、JXG、RDDに対しても有効と考えられるが、この患者群でのクロファラビンの長期的な有効性、最適な投与量、晩期毒性を明らかにするために、前方視的多施設試験が行われるべきである。

3) 「樹状細胞肉腫の遺伝子異常はLCHと共通する例がある」

The genetics of interdigitating dendritic cell sarcoma share some changes with Langerhans cell histiocytosis in select cases.

O'Malley DP, et al. Ann Diagn Pathol. 2014 Feb;18(1):18-20.

組織球症は、細胞分化転換を示すことで注目されている、すなわち、複数の血球系統に異常のある症例が報告されている。我々の発端症例では、LCHに指状嵌入樹状細胞(IDC)への分化が認められた。IDC肉腫の遺伝子異常については、IDC肉腫が非常に稀であるため、現在のところほとんど知られていない。CGHアレイを使用して、IDC肉腫の4例を評価し、我々の発端症例、および、以前にLCHで見つかっている遺伝子異常と比較した。 4例のIDC肉腫と1例のIDCへの分化を認めたLCH のパラフィン包埋検体を、CGHアレイを用いて評価した。IDCへの分化を認めたLCHでは、CGHアレイの解析で異常を認めなかった。 IDC肉腫では、4例中3例に遺伝子異常が同定されたが、1例には異常は同定されなかった。IDC肉腫の1例目では3qと13qの増幅、IDC肉腫の2例目ではトリソミー12、IDC肉腫の3例目では7p、12p、16p、18q、19q、22qの欠失を認めたが、IDC肉腫の4例目は異常を検出しなかった。IDCへの分化を認めた発端例のLCHでは、CGHアレイで異常は認めなかった。LCHではCGHアレイで検出可能な遺伝子異常はなかった。対照的に、4例中3例のIDC肉腫でCGHアレイによって検出可能な異常があった。さらに、これらのうち2つは、大きな遺伝子領域ではあるが、これまでにLCHで報告されている遺伝子異常と共通していた。複数のIDC肉腫症例に共通した遺伝子異常は見つからなかった。しかし、このことからIDC肉腫とLCHが関連する可能性を完全に否定することはできない。

4)「小児および成人の頭蓋骨および椎体骨の孤発性LCH」

Lee SK, et al. Childs Nerv Syst. 2014 Feb;30(2):271-5.

Kiratli H, et al. Eur J Ophthalmol. 2013 Jul-Aug;23(4):578-83.

【目的】LCHはまれな腫瘍でその臨床像や転帰は様々である。小児と成人の頭蓋骨および椎体骨の孤発性の溶骨性病変を分析した。【方法】2001年から2011年の間に、42例のLCH患者が手術を受けた。小児の21/33例(63.6%)、成人の8/9例(88.9%)に、頭蓋骨または椎体骨の病変があった。21例の小児患者のうち、10例は単一臓器単独病変、4例が単一臓器多病変、7例が多臓器型であった。8例の成人患者のうち、7例は単一臓器単独病変、1例が単一臓器多病変であった。これらのうち、頭蓋骨または椎体骨の孤発性病変の、小児患者10例と成人患者7例の臨床経過を分析した。 【結果】小児例の年齢の中央値は10.1歳(1.1~14.1歳)、成人例では34.6歳(26.1~52.0歳)であった。追跡期間の中央値は3.1年(0.6~9.5年)であった。15例が完全切除、2例が生検のみを受けた。術後の補助化学療法を4例の小児と1例の成人が受け、その内訳は、硬膜に癒着した腫瘤病変が2例、頭蓋底病変が1例、第一頸椎の腫瘤病変が1例、椎体骨病変から進展した軟部腫瘤病変が1例であった。追跡期間中に、硬膜に癒着した頭蓋病変の小児の1例が再燃した。その症例は、下垂体茎浸潤による中枢性尿崩症を1,3年後に、肩甲骨浸潤による肩甲骨痛を2.4年後に発症した。【結論】頭蓋骨や椎体骨の孤発性病変は臨床経過が良好に見えても、一部の症例で悪性の経過を示すことがある。

5) 「LCH患者の末梢血および組織におけるメルケル細胞ポリオーマウイルスDNAの検出」

Merkel cell polyomavirus DNA sequences in peripheral blood and tissues from patients with Langerhans cell histiocytosis.

Murakami I, et al. Hum Pathol. 2014 Jan;45(1):119-26.

LCHは、異常なランゲルハンス細胞が、単一骨病変や多臓器の播種性病変として増殖する肉芽腫性疾患である。様々なLCHの病型において、炎症性サイトカインや組織分解酵素といった炎症性分子の濃度が上昇していることから、LCHの病因にウイルス感染が契機になっている可能性を検討した。メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)が末梢血および病変組織に検出されるかを、定量的リアルタイムPCRおよびMCPyVラージT抗原に対する抗体を用いた免疫組織化学染色により検討した。リスク臓器浸潤のあるLCH患者の3例中2例の末梢血細胞においてMCPyV DNA量が上昇していたが、リスク臓器浸潤のない全12例のLCH患者ではMCPyV DNAは検出されなかった(p=0.029)。12例のLCH病変組織において、わずかな量であるがMCPyV DNAが検出されたが(0.002~0.033コピー/細胞)、対照群の反応性リンパ節過形成では0/5例(p =0 .0007)、2歳未満のLCH以外の皮膚疾患では0/11例(p = .0007)、皮膚病性リンパ節症では5/20例(p = .0002)しか検出されなかった。LCHにおいてMCPyVが検出される頻度は高いがウイルス量は少なく、MCPyVラージT抗原の発現頻度が低い(LCH患者13例中2例)という結果からすると、腫瘍性というよりも反応性としてのLCHの発症は、MCPyV感染に関連している可能性がある。

6)「IFN-γR1の正常な発現および機能によって、メンデル遺伝型マイコバクテリア易感染症とLCHを鑑別できる」

Intact IFN-γR1 expression and function distinguishes Langerhans cell histiocytosis from mendelian susceptibility to mycobacterial disease.

Quispel WT, et al. J Clin Immunol. 2014 Jan;34(1):84-93.

【目的】多発骨LCHは、メンデル遺伝型マイコバクテリア易感染症(MSMD)の特定のサブタイプでのマイコバクテリアの播種性感染と、臨床的および組織学的に鑑別が困難な場合がある。MSMD-患者では、IFN-γR1遺伝子、特にエクソン6のドミナントネガティブな生殖細胞系列での変異は、常染色体優性のIFN-γ受容体1欠損症(ADIFNGR1)を引き起こし、LCHの病像に類似することがある。同様の欠損がLCHの病態の基礎となる可能性があるという仮説を立てた。【方法】11例のLCH患者と4例のADIFNGR1患者において、発症時の生検組織を用い、IFN-γR1の発現を免疫組織化学的に検討した。18例のLCH患者と13例の健常対照において、単球上のFc-γ受容体の発現亢進がIFN-γによって誘導されるかによって、IFN-γR1の機能を評価した。炎症誘発性サイトカイン産生を、全血細胞をLPSとIFN-γで刺激の後に測定した。IFN-γR1遺伝子のエクソン6に変異が存在するかどうかを、67例のLCH患者においてシークエンス解析を行った。【結果】IFN-γR1の発現は、3例のLCH患者の組織検体でADIFGR1患者と同様に亢進していたが、他の8例のLCH患者においては、陰性から中等度陽性であった。IFN-γシグナル伝達の機能的な違いは、活動性、非活動性のLCH患者、健常対照との間で検出されなかった。 IFN-γR1遺伝子のエクソン6に生殖細胞変異は、67例の LCH患者において検出されなかった。 【結論】ADIFNGR1患者とは対照的に、LCH-患者ではIFN-γのシグナル伝達の機能不全はない。治療前、治療中、治療後のいずれの時期であっても、これらの非侵襲的な機能アッセイによってADIFNGR1とLCHは鑑別可能であり、それによって再発溶骨性病変のある患者に対して正しい治療レジメンの選択が可能となる。

7)「皮膚LCH:アジア系小児は全体的に良好な予後を示す」

Cutaneous Langerhans cell histiocytosis: study of Asian children shows good overall prognosis.

Ng SS, et al. Acta Paediatr. 2013 Nov;102(11):e514-8.

【目的】皮膚単独LCHのアジア系患者について、過去の皮膚単独LCH患者の研究を示し、皮膚病変を含む多臓器型LCHの我々のコホートと比較し、記述する。 【方法】第三小児病院(KK婦人・小児病院)で2001年1月~2011年12月の間の診療した皮膚LCHと診断された全例を検討した。臨床症状、検査所見、治療と転帰について解析した。【結果】皮膚病変のある患者が10例あった。6例は皮膚単独病変で骨病変や他臓器の浸潤はなかったが、4例は多臓器型であった。皮膚単独病変のうち、3例は外科的切除、1例はステロイド剤外用薬、2例は多剤併用化学療法で治療された。多臓器型の4例は多剤併用化学療法で治療された。経過観察中に、皮膚単独型から多臓器型に進展した例はなかった。【結論】皮膚LCH、診断時に単独型か多臓器型かにかかわらず、全体的に予後は良好である。しかし、再燃の観点から長期の経過観察が推奨される。

8) 「胸腺LCHの放射線学的特徴」

Radiological features of thymic langerhans cell histiocytosis.

Lakatos K, et al. Pediatr Blood Cancer. 2013 Nov;60(11):E143-5.

LCH患者1264例中18例(1.4%)に胸腺浸潤を認めた。胸腺浸潤がLCHの初期症状であった9例は全て、2歳未満の多臓器型で、その4%(9/242例)を占めた。15例で画像(超音波検査、CT、MRI)の中央診断ができた。胸腺浸潤の特徴的所見は、腫大(67%)、嚢胞(80%)、石灰化(100%)であった。超音波検査とMRI所見は全て一致していた。2歳未満のLCH患者の初期臨床評価のための標準検査として、胸腺の超音波検査を加えることを推奨する。

9)「小児LCHにおける胸腺と縦隔リンパ節浸潤:フランス全国コホートの長期フォローアップ」

Thymus and mediastinal node involvement in childhood Langerhans cell histiocytosis: long-term follow-up from the French national cohort.

Ducassou S, et al. Pediatr Blood Cancer. 2013 Nov;60(11):1759-65.

【背景】LCHにおける縦隔浸潤の報告はほとんどない。縦隔浸潤を伴った小児LCHの、臨床的、放射線学的、生物学的所見、および転帰について述べる。【方法】フランスLCHに登録された18歳未満1423例の中から、胸部X線で縦隔拡大のある例の診療情報を抽出した。【結果】37例が抽出され、男性が18例、診断時年齢の中央値は0.7歳、追跡期間の中央値は6.2年であった。縦隔浸潤の陽性率は、診断時年齢によって異なり、1歳未満では7%、5歳以上では1%未満であった。13例(35%)は、縦隔浸潤に関連した症状、すなわち、呼吸困難(4例)、上大静脈症候群(2例)、咳および多呼吸(10例)が診断の契機となっていた。診断時に32例で胸部CTが行われ、気管圧迫(5例)、静脈血栓症(2例)、石灰化(16例)を認めた。LCH診断時に全例が多臓器型で、37例中35例はビンブラスチンとコルチコステロイドで初期治療を受けていた。5例が死亡し、死因は縦隔浸潤が1例、治療不応性の造血器浸潤が4例であった。5年の全生存率は87.1%で、続発症として免疫不全は認めなかった。【結論】LCHにおける縦隔浸潤は主に幼児に発生し、診断は胸腺の腫大と石灰化のCT所見に基づいていた。

10) 「肺LCHにおける気管支鏡検査の有用性」

Utility of bronchoscopy in pulmonary Langerhans cell histiocytosis.

Baqir M, et al. J Bronchology Interv Pulmonol. 2013 Oct;20(4):309-12.

【背景】肺LCHはまれな間質性肺疾患であり、成人では通常、喫煙に関連している。この疾患での気管支鏡による肺生検の有用性についてのデータは比較的少ない。【方法】メイヨークリニックで1997年から2012年に診療し、気管支鏡検査で肺生検を施行した肺LCH症例を検索した。研究を開始する前に、メイヨー財団のIRBの承認を得た。これらの症例の診療情報から、疫学的および臨床的特徴、画像検査、生検結果のデータを抽出し検討した。 【結果】肺LCHの38例が診断のために気管支鏡検査による生検を受けていた。年齢の中央値は39.5歳(21歳~66歳)で、24例が女性であった。32例(84%)は診断時に喫煙しており、5例(13%)に喫煙歴があり、1例(3%)は非喫煙者であった。外科的または気管支鏡による肺生検で典型的な病理組織像を認める例、気管支肺胞洗浄液中のCD1a陽性細胞が5%以上ある例、および、臨床像とCT所見が肺LCHに一致し肺以外の病変で組織学的にLCHと診断されている例を、肺LCHとした。19例(50%)は、気管支鏡による生検で、肺LCHの診断が可能であった。8例に気管支肺胞洗浄液の免疫染色が行われ、CD1a陽性細胞が5%以上の所見から、さらに3例(8%)が肺LCHと診断された。【結論】気管支肺生検は、肺LCHの診断に有用であり、診断のための検体を得る第一の手段とすべきである。