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JAPAN ACH STUDY GROUP 日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ

本サイトは、LCHの患者さんやご家族の方々と医師との意見・情報交換の場です。

第39回 最新学術情報

最近掲載されたLCH関連の論文抄録を紹介します。

1)「LCH発症と親および周産期の特徴:ヒスパニック系での発症リスク増加」

The role of parental and perinatal characteristics on Langerhans cell histiocytosis: characterizing increased risk among Hispanics.

Peckham-Gregory EC, et al. Ann Epidemiol. 2018 Aug;28(8):521-528.

【目的】骨髄性腫瘍性疾患であるLCHにおける遺伝的および環境的な発症リスク因子については明らかになっていない。よって、この小児がんにおいて、親や周産期の要因が発症リスクになるかを検討した。【方法】1995~2011年に発症したLCH 162例に関する情報をTexas Cancer Registryから得た。同時期に出生した、出生年を一致させた1620人を対照とした。親の年齢、人種/民族、妊娠週数に対する出生時体重、出生順位を評価した。ロジスティック回帰分析を用い、調整したオッズ比(aOR)と95%信頼区間(CI)を算出し、各因子とLCH発症との関連性を評価した。【結果】人種/民族を除いて、LCH発症リスクと関連する周産期または親の要因はほとんどなかった。ヒスパニック系民族の母親は、非ヒスパニック系白人と比較してLCHの子を持つ率が高かった(aOR, 1.51; 95%CI, 1.02-2.25)。この率は、両親ともヒスパニック系であった場合により高かった(aOR, 1.80; 95%CI, 1.13-2.87)。非ヒスパニック系黒人の母親は、非ヒスパニック系白人と比較してLCHの子をもつ率が低い傾向にあった(aOR, 0.50; 95%CI, 0.24-1.02)。【結論】LCHは骨髄系前駆細胞におけるMAPキナーゼ経路の遺伝子の体細胞変異による疾患である。ヒスパニック系の両親の子ではLCHの発症率が増加することから、LCHの病因に遺伝的要因が潜在していることを示唆される。

2)「壊死性黄色肉芽腫:30年にわたる単一施設の経験」

Necrobiotic xanthogranuloma: a 30-year single-center experience.

Hilal T, et al. Ann Hematol. 2018 Aug;97(8):1471-1479.

稀な非ランゲルハンス細胞組織球症である壊死性黄色肉芽腫(NXG)の臨床的特徴、関連する合併症、治療の特徴を明らかにするため、アリゾナのメイヨクリニックで1987年~2017年6月に病理学的に診断されたNXGの症例を後方視的に検討した。臨床所見、検査所見、関連する合併症、治療法、治療反応性に関する情報を抽出した。19例の患者が確認された。平均年齢は54歳(範囲 17〜84歳)で、男女比に差はなかった。追跡期間の中央値は5.5年(範囲 1〜18)であった。大部分の患者(84%)においてM蛋白が検出され、IgGκが58%を占めた。最も多い皮膚病変の部位は眼窩周囲であった(53%)。大多数の患者は皮膚外症状を有し、最も多いのは肝臓(32%)で、次いで副鼻腔(21%)であった。26%は、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、くすぶり型骨髄腫、多発性骨髄腫などの血液悪性腫瘍を合併していた。最も多くされていた治療はクロラムブシル±全身性コルチコステロイドであった。ほとんどの例(95%)で治療反応が得られていたが、多くの例(74%)は1〜3種類の治療を受けていた。NXGは反応性の組織球症であり、一般的に複数の臓器に浸潤し、正確な診断のためには臨床的に疑うことが重要である。治療選択は、関連する合併症と浸潤臓器に基づいてなされるべきある。

3)「肺LCHにおける形態計測的な肺動脈変化の研究」

Morphometric Study of Pulmonary Arterial Changes in Pulmonary Langerhans Cell Histiocytosis.

Bois MC, et al. Arch Pathol Lab Med. 2018 Aug;142(8):929-937.

【背景】肺高血圧症は、肺LCHの合併症である。しかし、病因はほとんど解明されていない。肺LCH患者の肺動脈の病理組織学的変化をみた研究はほとんどない。動脈リモデリングの体系的な定量化はまだ行われていない。【目的】形態計測法によって肺LCH患者における動脈リモデリングの程度を定量化し、これらの結果を適切な臨床パラメータと相関させる。【方法】1995-2015年の当施設の肺LCH患者を対象とし、年齢、性、喫煙状況を一致させた例を対照として用いた。肺LCH患者の肺LCHの病変部と非病変部、対照群において、小から中程度の肺動脈の内膜および中膜の厚さを計測し分析した。ウィルコクソンの符号付き順位検定を用いて比較した。【結果】肺LCH患者25例(男14、年齢中央値46歳; 四分位範囲37-55歳)および25例の対照群について解析した。肺LCH患者の病変部の肺動脈の内膜および中膜は、対照群よりも厚かった(それぞれp<0.001、p<0.001)また、非病変部の肺動脈の内膜及び中膜も、対照群よりも厚かった(それぞれp<0.001、p<0.001)。肺LCH患者の病変部の肺動脈の内膜および中膜は、非病変部より厚かった(それぞれp=0.02、p=0.002)。肺LCHによる肺高血圧症のある患者は、肺高血圧症のない患者より予後が不良であった(p=0.04、ハザード比 4.5 [1.1-22.2])。心エコー検査による右心房サイズ、推定右心房圧、および右心室収縮期圧(p=0.01)は、生存率と逆相関していた(それぞれp=0.007、p=0.01、p=0.01)。【結論】この結果は、血管閉塞や炎症性細胞浸潤以外の要因が、少なくとも部分的には、肺LCHの血管リモデリングに関与していることを示唆している。

4)「低αリポ蛋白血症およびBRAF V600E変異はErdheim-Chester病における大動脈浸潤の主な予測因子である

Hypoalphalipoproteinemia and BRAFV600E Mutation Are Major Predictors of Aortic Infiltration in the Erdheim-Chester Disease.

Cohen-Aubart F, et al. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2018 Aug;38(8):1913-1925.

【目的】Erdheim-Chester病(ECD)は、脂質を含む組織球が多数の臓器に浸潤するまれな非ランゲルハンス細胞組織球症である。心血管障害はECDに高頻度に見られ、予後の要因である。この研究は、脂質代謝の変化が、組織球への脂質蓄積およびECDにおける心血管浸潤に関与しているかを明らかにすることを目的とする。【方法と結果】血漿脂質分析によって、BRAF V600E変異を伴う男性ECD患者は、低HDLコレステロール血症を呈し、低αリポ蛋白血症があることが明らかになった。BRAF V600E変異を伴う男性ECD患者は対照と比較し、マクロファージからの遊離コレステロール排出能が低下していた。ECD患者の84%に心血管病変を認め、BRAF V600E変異と低αリポ蛋白血症が大動脈浸潤に関連する独立した因子であった。組織球の前駆細胞である血中CD14陽性細胞の遺伝子発現が、低HDLコレステロールと部分的に相関する、大動脈浸潤を伴う特徴的な炎症状態に関連していた。さらに、BRAF V600E変異の阻害剤であるベムラフェニブによる治療により、障害されていたコレステロール排出能は回復し、大動脈浸潤は減少した。【結論】これらの結果は、BRAF V600E変異を伴う男性のECD患者において、低αリポ蛋白血症が組織球の脂質含有を促進することを示している。さらに、HDLには血中CD14陽性細胞の大動脈内へ浸潤を調節する働きがあり、BRAF V600E変異、および、低HDLコレステロール血症が、ECDにおける大動脈浸潤に関連する独立した因子であること示している。

5)「寛解導入療法の強化および維持療法の延長は、多発骨型の小児LCHの転帰を改善させなかった:日本LCH研究グループ-02プロトコル研究の結果」

Intensification of induction therapy and prolongation of maintenance therapy did not improve the outcome of pediatric Langerhans cell histiocytosis with single-system multifocal bone lesions: results of the Japan Langerhans Cell Histiocytosis Study Group-02 Protocol Study.

Morimoto A, et al. Int J Hematol. 2018 Aug;108(2):192-198.

単独臓器(SS)型の多発骨(MFB)病変を伴うLCHは、致命的になることはめったにないが、再発し、LCH関連した合併症を発症することがある。小児の多病変LCHの予後改善のために、日本LCH研究グループ(JLSG)-96研究を改変した治療プロトコルによる臨床試験を行った。2002~09年にJLSG-02プロトコルで治療されたSS-MFB病変を伴う新規発症のLCH患者の転帰を評価した。JLSG-02はJLSG-96から、寛解導入相のプレドニゾロン投与量の増加、および、維持療法期間を24から48週間に延長の2点が改変された。82例の患者が解析対象となり、追跡期間の中央値8.0年であった。6週時点での治療反応率は92.7%であった。しかし、治療反応した症例の27.6%が再発した。4.8%が中枢性尿崩症や神経変性症といった中枢神経系関連の続発症を発症し、これらは再発例に多かった。死亡例はなかった。5年間の無イベント生存率は、JLSG-02と-96コホートの間で差はなかった(66.7%と65.1%; p=0.697)。JLSG-96治療プロトコルの改変は、SS-MFB病変を伴うLCHの予後改善には寄与しなかった。

6)「インドの三次癌研究所からの修正リスク適応プロトコルによるLCHの治療」

Treatment of Langerhans cell histiocytosis with a modified risk-adapted protocol-experience from a tertiary cancer institute in India.

Narula G, et al. Pediatr Blood Cancer. 2018 Aug;65(8):e27028.

【背景】リスク臓器浸潤(RO)陽性のLCHや初期治療反応性不良のLCHは、再発率や死亡率が高く、造血細胞移植を含む集中的な救済療法を必要とし、治療費用がかさみ治療関連毒性が増す。これを軽減するために、RO陽性例に対して、低用量のエトポシド内服療法によって標準的な寛解導入療法を強化し、エトポシド内服療法を併用した長期の維持療法を行い、その効果を後方視的に解析した。【方法】2009~14年までのLCH患者を対象とした。標準的なビンブラスチン/プレドニゾロン療法をRO陽性多臓器(MS)型(肺以外にROのない3例を含む)に対して、25週目まで毎週行った。単独臓器(SS)型とRO陰性MS型では、ビンブラスチン/プレドニゾロン療法を12週目まで毎週行い、13週以降は3週毎とした。維持療法として3週毎のビンブラスチン/5日間プレドニゾロン+6-メルカプトプリン(60mg) 連日内服+毎週のメトトレキセート(15mg/m2) を、RO陽性MS型には18か月、RO陰性MS型には9か月間行った。さらに、RO陽性MS型には、治療開始後1年間、4週毎に3週間エトポシド(50 mg/m2)を経口投与した。【結果】連続した50例患者について解析した。年齢の中央値は36か月(4-189か月)であった。SS型、RO陰性MS型、RO陽性MS型は、それぞれ29例(58%)、9例(18%)、12例(24%)であった。4例が追跡不能となったため評価から除外した。6週目の反応評価は、24例(52%)が活動性病変の消失(NAD)、17例(37%)が活動性病変の改善(AD-better)、1例(2%)は活動性病変の悪化(AD-worse)であった。RO陽性MS型では、3例(25%)がNAD 、8例(66.6%)がAD-betterであった。45例が12週目までにNADに達した。3例が再発した。追跡期間の中央値39か月(8〜84)で、5年間の無イベント生存期間は、SS型とRO陰性MS型で85.6%、RO陽性MS型で100%であった。1例が原病と関連しない原因で寛解中に死亡したため、全生存率は97%であった。【結論】経口エトポシドにより強化した寛解導入療法と維持療法によって、RO陽性多臓器型LCHにおいて、早期かつ持続的な効果が得られた。維持療法の延長によって、RO陽性およびRO陰性多臓器型LCHの再発が抑制され、高い生存率が得られた。

7)「BRAF遺伝子変異陽性LCHにおけるMAP2K1、TP53、U2AF1遺伝子の変異頻度:LCHの遺伝子変異のさらなる特徴」

Frequency of MAP2K1, TP53, and U2AF1 Mutations in BRAF-mutated Langerhans Cell Histiocytosis: Further Characterizing the Genomic Landscape of LCH.

McGinnis LM, et al. Am J Surg Pathol. 2018 Jul;42(7):885-890.

LCHは、Erkシグナル伝達経路に活性化変異のある腫瘍性LCH細胞の増殖性疾患である。他の骨髄単球性悪性腫瘍においてTP53U2AF1遺伝子の変異がみられることから、LCH患者でこれらの遺伝子の変異がBRAF遺伝子の変異の有無と連鎖している可能性を考えた。スタンフォード大学病院でLCHと病理学的に診断された症例を収集した。ホルマリン固定パラフィン包埋組織を用い、直接配列決定法により、BRAFARAFTP53U2AF1MAP2K1遺伝子の既知の変異を解析した。41例(71%)においてBRAF V600E変異を認めた。MAP2K1変異は5例に認められ、BRAF V600E変異のない例では17例中3例(17%)、BRAF V600E変異例では41例中2例(5%)で、BRAF変異陰性例に有意に多かった(p=0.14)。以前に報告されたARAF Q347_A348del変異のある例はなかった。TP53変異のある10例は全てBRAF V600E変異陽性で、TP53変異はBRAF V600E変異例に有意に多かった(p=0.021)。U2AF1変異のある11例のうち、9例はBRAF V600E変異陽性、2例はBRAF V600E変異陰性で、BRAF V600E変異と関連はなかった(p=0.31)。興味深いことに、MAP2K1変異とBRAF V600E変異は相互排他的であるという以前からの報告とは異なった結果であった。MAP2K1変異は、診断時からBRAF変異と同時に存在しているか、または疾患の進行に伴い獲得された可能性が示唆された。さらに、おそらく有害なTP53変異は、BRAF変異と関連し、病因に重要な役割を果たしていると考えられる。

8)「中枢神経LCH:LCHによる腫瘤性病変と中枢神経変性症は共に同一起源の造血細胞が関与する」

CNS Langerhans cell histiocytosis: Common hematopoietic origin for LCH-associated neurodegeneration and mass lesions.

McClain KL, et al. Cancer. 2018 Jun 15;124(12):2607-2620.

【背景】中枢神経(CNS)-LCHには、腫瘤性病変と、病因が未知の神経変性疾患(LCH-ND)がある。本研究の目的は、CNS-LCHを引き起こす機序を明らかにすることである。【方法】脳脊髄液(CSF)中の蛋白質および細胞外BRAF V600E DNAを分析し、CNS-LCHの患者と脳腫瘍や他の神経変性症の患者で比較した。さらに、末梢血単核球(PBMC)とLCH-ND患者の脳生検組織においてBRAF V600Eが検出されるかを検討し、4例の進行性LCH-ND患者においてBRAF V600E阻害剤に対する反応性を評価した。【結果】オステオポンチンは、CNS-LCHの患者において唯一の一貫して高値のCSF蛋白質であった。BRAF V600E DNAはCSF中に、LCH-NDと中枢神経系外の活動性病変のあるLCH患者共に、わずか2/20例(10%)だけに検出された。しかし、LCH-NDを発症したLCH患者においては、治療のどの段階においても、PBMC中にBRAF V600E陽性細胞が有意に高い頻度で検出された。LCH-NDの患者の脳生検では、単球の形質(CD14+ CD33+ CD163+ P2RY12-)を示しオステオポンチン発現するBRAF V600E陽性細胞の血管周囲へびまん性浸潤を認めた。BRAF V600E阻害剤で治療を受けたLCH-ND患者の4例中3例は、臨床的かつ放射線学的に有意な改善がみられた。【結論】LCH-ND患者では、PBMC中にBRAF V600E陽性細胞がみられ、かつ、脳内に浸潤する骨髄/単球系細胞もBRAF V600E陽性であるということから、LCH-ND は、LCH病変部位のCD207陽性細胞と起源を同じくするBRAF V600E変異陽性の造血前駆細胞から生じた活発な脱髄病変だと考えられる。MAPKシグナル伝達経路が活性化した骨髄前駆細胞を標的とした治療は、LCH-NDに有効である可能性がある。

9)「診断時の発熱と皮膚浸潤は、LCHが難治性であることの予測因子である:単一施設における40例のケースシリーズ」

Fever and Skin Involvement at Diagnosis Predicting the Intractable Langerhans Cell Histiocytosis: 40 Case-Series in a Single Center.

Kobayashi T, et al. J Pediatr Hematol Oncol. 2018 Apr;40(3):e148-e153.

LCHは不思議な免疫反応を伴うクローン性疾患である。LCH患者はときおり発熱を伴うが、その意義はよくわかっていない。LCHが治療抵抗性であったり再発したりすることを予測する因子を検討した。1998~2014年の間に九州大学で治療を受けた計40例の小児LCH患者について検討した。臨床記録を後方視的に解析した。16例が多臓器型(MS)で、4例はリスク臓器浸潤(RO)陽性、12例はRO陰性であった。24例が単独臓器型で、その内、多発骨病変が8例、単一骨病変が13例、皮膚病変が2例、リンパ節病変が1例であった。8例が難治性で、その内7例がMS型、1例は多発骨型であった。MS型の2例(RO陽性1例、陰性1例)が死亡した。発症時、10例に持続性の発熱(> 38℃)がみられた。難治例では、診断時に、発熱、皮膚病変かつRO陽性、白血球増多、凝固障害、小球性貧血、可溶性IL-2受容体高値、CRP高値を認めることが多かった。多変量解析により、診断時の発熱および皮膚病変は独立して難治性と関連していることが示された(発熱 オッズ比 35.5, 95%信頼区間 3.0-1229.1; 皮膚病変 オッズ比 24.6, 95%信頼区間 1.9-868.7)。小児LCHにおいて、初発時の発熱および皮膚病変は、ROの有無にかかわらず、難治性または死亡のリスクとなる可能性がある。

10)「Erdheim-Chester病の病理組織学:分子的に特徴づけられたコホートの包括的な検討」

The histopathology of Erdheim-Chester disease: a comprehensive review of a molecularly characterized cohort.

Ozkaya N, et al. Mod Pathol. 2018 Apr;31(4):581-597.

Erdheim-Chester病(ECD)は、組織学的には炎症性を背景として成熟組織球が全身性に増殖する特徴をもった稀な非ランゲルハンス細胞組織球症である。この疾患では、あらゆる臓器に浸潤するが、最も頻度が高いのは骨、皮膚、後腹膜、心臓、眼窩、肺、脳である。組織球の増殖はECDの組織学的特徴であるが、様々な形態学的所見が症例研究や小規模症例シリーズとして記載されている。臨床的および分子学的に確定されたECDにおける病理組織学的特徴の包括的なレビューはない。この問題に対処し、臨床診療を助けるために、臨床的および分子学的に確定されたECDのコホートにおいて、ECDの病理像を包括的に分析した。42例のECD患者の73の組織球が浸潤した様々な臓器の生検検体;骨16検体、後腹膜11検体、皮膚19検体、眼窩6検体、脳5検体、肺6検体、心臓2検体、硬膜外軟組織3検体、口腔2検体、皮下軟組織2検体、精巣2検体を検討した。8例の患者では、臨床徴候があったため骨髄生検が1回以上行われ、そのうち6例において骨髄性腫瘍を伴っていることが判明した。38例に遺伝子検査が行われた。体細胞変異として、BRAF変異を25/38例、MAP2K1変異を6/38例、ARAF変異を2/38例、MAP2K2変異を1/38例、KRAS変異を1/38例、NRAS変異を1/38例に認めた。MAP2K1変異を有する1例ではPIK3CA変異も認めた。組織像および免疫抗原マーカは、一様ではなく、病変部位により特徴が異なったり、他の組織球症や骨髄性腫瘍との重複を認めたりすることもあり、診断を誤る可能性が示された。ECDの病理像は今まで認識されていたよりもっと多様であると認識することにより、臨床医および病理医が臨床経過の早い段階でECDを診断し、ECDの患者をよりよく治療できるようになることが望まれる。