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JAPAN ACH STUDY GROUP 日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ

本サイトは、LCHの患者さんやご家族の方々と医師との意見・情報交換の場です。

第25回 最新学術情報(2014.12)

最近掲載されたLCH関連の論文抄録を紹介します。

1)「初発時または再燃時にインドメタシン単独で治療した症候性の骨LCH」

Symptomatic bone langerhans cell histiocytosis treated at diagnosis or after reactivation with indomethacin alone.

Braier J, et al. J Pediatr Hematol Oncol. 2014 Jul;36(5):e280-4.

初発時または再燃時にインドメタシン単独で治療した症候性の骨LCHの転帰を評価した。骨単独のLCH患者に、ランダム化せず、インドメタシン(2mg/ kg /日)を経口投与した。1997~2012年の間の連続した38例に対し4か月間(中央値)治療した。初期治療(8週間)後の疾患非活動性(NAD)は、痛みの消失、軟部組織の消失、大きさの増大なし、新たな骨病変なしと定義した。初発時治療22例のうち、18例は初期治療後にNADとなった(2例は骨に再燃したがインドメタシンで再治療しNADとなった)。3例は部分反応し、インドメタシン、ステロイド、または放射線療による治療後にNADとなった。1例は骨病変が進行し、ステロイドと化学療法による治療後にNADとなった。再燃時治療16例では、全例が初期治療後にNADとなった。5例が再燃したが、4例はインドメタシンで再治療しNADとなった。重大な毒性はなかった。症候性骨病変のLCHに対し、インドメタシンは安全で有効な薬物である。この結果は、限局性の骨病変に対して、化学療法は必要ない可能性を支持する。

2) 「小児におけるLCHの肝病変 - CT、MRI、MRI胆道膵管造影による画像評価」

Hepatic involvement of Langerhans cell histiocytosis in children--imaging findings of computed tomography, magnetic resonance imaging and magnetic resonance cholangiopancreatography.

Shi Y, et al. Pediatr Radiol. 2014 Jun;44(6):713-8.

【背景】LCHは主に小児に発生する稀な疾患であり、肝病変は一般的に予後不良因子である。【目的】小児のLCHの肝病変のCTとMRI所見、特に異常な胆管所見をMRI胆道膵管造影(MRCP)で明らかにする。【症例と方法】播種性LCHと診断された13例の小児(男子7例、女子6例、平均年齢28.9か月)。肝病変を評価するため、CT(n =5)、MRI(n = 4)、CTとMRI(n = 4)を行った。【結果】13例全例に、CTやMRIで、帯状または結節性病変を呈する門脈周囲の異常を認めた。7例において、肝臓の周辺領域に肝実質病変が見出され、複数の結節性病変がMRIで6例、嚢胞様病変がCTとMRIで3例であった。13例中11例に、CTとMRIで胆管の拡張を認めた。13例中8例でMRCPが行われ、総肝管やその一次分枝(中心胆管)の、わずかな拡張を伴う狭窄や部分的狭窄を認めた。これら例の末梢胆管には分節拡張と狭窄が認められた。【結論】MRCPによって明らかにされた中心胆管の狭窄は小児LCHの肝病変の所見として最も重要である。

3) 「LCHにおけるARAF活性化体細胞変異」

Somatic activating ARAF mutations in Langerhans cell histiocytosis.

Nelson DS, et al. Blood. 2014 May 15;123(20):3152-5.

LCH細胞ではERKシグナル伝達経路は活性化されているが、BRAF活性化変異が見出されるのは60%の症例だけである。ERK経路の活性化を引き起こす他の遺伝子変異を見出すため、3例でLCH細胞を純化し全エクソン配列解析を行った。BRAF変異のない1例で、ARAFのキナーゼドメインに変異が見出された。このARAF変異は、野生型ARAFとは異なり、高いMAPKのリン酸化活性があり、in vitroでマウス胚線維芽細胞を形質転換できた。変異ARAF活性は、BRAF阻害剤であるベムラフェニブによって阻害されたことから、標的阻害剤治療のためにLCH患者を選択する場合、ERK経路の異常を完全に評価する重要性を示された。

4)「成人の系統不明または骨髄性の急性白血病におけるLCH:クローン関連の可能性」

Langerhans cell histiocytosis in acute leukemias of ambiguous or myeloid lineage in adult patients: support for a possible clonal relationship.

Yohe SL, et al. Mod Pathol. 2014 May;27(5):651-6.

4例のLCHに関連した系統不明または骨髄性の急性白血病の発症から、2つの腫瘍が共通の起源である証拠を示す。1例は、白血病芽球とLCH細胞の両方に、クローン関連性を示す体細胞変異21トリソミーがみられた。もう1例では、LCH細胞と白血病芽球の両方にCD2、CD13、CD117が発現しており、クローン関連性が示唆された。4例ともにLCHと急性白血病は部位が混合しており、全例に白血病のリンパ節の髄外病変があり、LCHは白血病が浸潤している部位のみに存在するという特異な特徴的があった。全例にT細胞抗原が発現し、混合性、T/myeloid、特定不能の急性白血病の基準のひとつに合致した。LCHと急性白血病が共存することは、両者がクローン的に関連する例があるという考えを支持する。さらに、これらの骨髄性または系統不明の急性白血病にLCHを合併した例では、共通した腫瘍性造血幹細胞の存在を示唆するいくつか特異な特徴がある。

5) 「小児の神経障害を合併した胸椎や腰椎LCHに対する椎弓根スクリュー法による外科的治療」

Surgical treatment based on pedicle screw instrumentation for thoracic or lumbar spinal Langerhans cell histiocytosis complicated with neurologic deficit in children.

Lü GH, et al. Spine J. 2014 May 1;14(5):768-76.

【背景】小児の椎体LCHに対する手術適応と術式についてはいまだ定まっていない。外科的治療を受けた大規模な症例報告はほとんどなく、術式もやや旧式である。よって、治療戦略をよりよくするために、改良された術式を用いた大規模な症例調査が有益で役立つ。【目的】神経障害を合併した小児の胸椎や腰椎LCHに対する妥当な治療戦略を推奨する。【研究デザイン・設定】後方視的・学術医療センター。【症例】神経障害を伴い胸椎や腰椎LCHと診断され、2005年1月から2010年1月に外科的治療を受けた、2~16歳の12例の小児。【結果判定法】フランケル分類による神経学的機能の評価、腫瘤の溶解、病変の再燃。【方法】12例は術前に全例とも、局所の痛み・進行性の神経症状を呈した。神経学的評価では、2例がフランケル分類グレードB、8例がグレードC、2例がグレードDであった。放射線学的所見として、典型的な扁平椎、脊髄を圧迫する脊柱管の占拠性腫瘤、50%を超える脊柱管の浸潤がみられた。最初の7例では、椎弓根スクリューを用いた後方器具術に、前方椎体の切除、減圧、支持骨移植を組み合わせた手術を一期的に行った。残りの5例では、後方椎弓根スクリュー固定、減圧のための椎弓切除(腫瘍の切除による)、および同種骨ブロック移植による椎弓板の補修を行い、崩壊した椎体はそのままにした。いずれの例も、術後に化学療法や放射線療法を行わなかった。【結果】平均追跡期間は43.3か月であった。平均手術時間は、後方と前方の組み合わせ術では330分、後方術では142分であった(p=.000)。平均出血量は、後方と前方の組み合わせ術では933 mL、後方術では497 mLであった(p=0.039)。後方と前方の組み合わせ術を受けた7例中3例で手術に伴う合併症、すなわち、1例で肋間神経痛、2例で胸水が生じた。重篤な神経学的障害、器具固定の不具合、病変の再燃は、追跡期間中には見られなかった。12例全例で、手術後2~12週間で、神経学的機能は完全に回復した。前方椎体の骨移植を受けた7例は全例で移植片は融合し良好な形状となり、椎弓板の補修のための同種骨ブロック移植をうけた残りの5例も移植片は完全に融合した。内部固定器は、初期に手術を受けた6例では、3~5年(平均4.1年)で除去した。脊柱側弯症と脊柱後弯症を含め脊柱変形は、追跡期間中に両術式ともに見られなかった。【結論】椎体LCH患者における神経学的症状は、恒久的かつ深刻な障害を防止するために、主要な手術適応の指標である。手術によって、迅速な神経機能の回復が期待できる。椎弓根スクリュー法を基本とした、前方+後方術、後方術ともに、神経圧迫の解除に同様に有効である。しかし、後方術は合併症が少ないことからより好ましく、また、病変椎体を残すことによって再燃率が上がることはない。

6)「BRAF V600Eが樹状細胞の前駆細胞に発現するか分化した樹状細胞に発現するかで、LCHの臨床的リスクが決まる」

BRAF-V600E expression in precursor versus differentiated dendritic cells defines clinically distinct LCH risk groups.

Berres ML, et al. J Exp Med. 2014 Apr 7;211(4):669-83.

LCHは、炎症性病変にCD207陽性の樹状細胞(DC)が集簇する特徴をもつ、病態が明らかではないクローン性の疾患である。LCHにおいては、BRAF V600E変異が再現性を持って報告されている。本研究では、100例の患者のLCH病変で遺伝子型を検査したところ、64%の患者で、浸潤しているCD207陽性DCにBRAF V600E変異が見られた。病変部位のDCのBRAF V600E変異の有無は、どの臨床的リスク群かには関連せず、再発リスクに関連していた。驚くべきことに、活動性病変のある高リスクLCH患者では、末梢血のCD11c陽性・CD14陽性細胞、骨髄のCD34陽性の造血前駆細胞に、BRAF V600E変異が見られた。一方、低リスクLCH患者では、BRAF変異は病変部位のCD207陽性DCにのみ見られた。重要なことに、DCにBRAF V600Eを発現させることにより、マウスにLCH様病変を引き起こすことができた。ヒトでの知見に一致して、骨髄DC前駆細胞にBRAF V600Eを発現させるとヒトの高リスクLCHの臨床像を再現できたのに対し、分化したDCにBRAF V600Eを発現させ場合には低リスクLCHに非常に似た病像となった。これらのことから、LCHを骨髄性腫瘍に分類することを提案し、高リスクLCHは、造血前駆細胞の体細胞突然変異から生じ、低リスクLCHは病変部位の前駆DCの体細胞突然変異から生じるという仮設を提唱する。

7) 「LCHにおけるBRAF V600E変異の発現:25例の肺LCHおよび54例の肺外LCHの臨床および免疫組織化学的研究」

BRAF V600E expression in Langerhans cell histiocytosis: clinical and immunohistochemical study on 25 pulmonary and 54 extrapulmonary cases.

Roden AC, et al. Am J Surg Pathol. 2014 Apr;38(4):548-51.

肺LCHは喫煙に関連する非腫瘍性の疾患であり、一般にクローン性で腫瘍性とみなされる肺外LCHとは異なると考えられている。最近のゲノム研究により、肺外LCH症例では38%~57%にBRAF V600E遺伝子変異があることがPCRで示された。我々は、免疫組織化学により、肺LCHと肺外LCH症例によってBRAF V600E蛋白の発現を評価した。肺LCHと肺以外のLCHにおいて、BRAF V600E遺伝子変異の有無とBRAF V600E蛋白の発現を比較した。肺LCHが25例(年齢42.0±11.4歳、男性10例)と肺外LCHが54例(年齢27.6±21.8歳、男性37例)であった。肺LCHの7/25例(28%)(年齢45.3±8.1歳、男性2例)にBRAF V600E蛋白の発現があり、この7例中6例はBRAF V600E遺伝子変異が陽性であった。肺外LCHでは19/54例(35%)(年齢27.6±22.1歳、13例)がBRAF V600E蛋白発現陽性かつ遺伝子変異陽性であった。しかし、免疫組織化学で陰性の2例は遺伝子変異解析で陽性であった。肺LCH患者の全例が現在または元喫煙者だったのに対し、肺外PLCHでは28/54例は喫煙経験がなかった。肺LCH患者の診断時の累積喫煙歴は、BRAF V600E陰性患者に比べ陽性患者では有意に長期であった(平均48.3年 vs 23.7年、両側t検定でp=0.01)。免疫組織化学によるBRAF V600E蛋白発現は、3例(4.4%)を除いて、BRAF V600E遺伝子変異と一致した。結論として、BRAF V600E蛋白発現のある肺LCHは、クローン増殖があり、喫煙がそれに関与している可能性がある。

8)「LCHの臨床的特徴と治療成績:単一施設での22年の154例の経験」

Clinical characteristics and treatment outcome of Langerhans cell histiocytosis: 22 years' experience of 154 patients at a single center.

Lee JW, et al. Pediatr Hematol Oncol. 2014 Apr;31(3):293-302.

LCHは病因不明の稀な疾患である。希少疾患であり臨床症状が多様であることから、単一施設による大規模な研究は少ない。本研究では、臨床的特徴、予後因子、治療成績を分析した。1986年1月から2007年12月にソウル大学小児病院でLCHと診断され治療された計154例の診療録を後方視的に分析した。106例(68.8%)が単一臓器型、48例(31.2%)が多臓器型であった。29例(18.8%)はリスク臓器病変陽性であった。29例(18.8%)が再燃し、全体の全生存(OS)は、追跡期間の中央値7.0年で、97.1%であった。4歳未満、3臓器以上に病変がある、リスク臓器病変陽性の症例は、無増悪生存期間(PFS)が有意に短かった(それぞれ、p=0.001、<0.001、および<0.001)。リスク臓器病変陰性例と陽性例の10年時点での推定PFSはそれぞれ52.6%と83.8%であった。単一臓器型は、PFS 89.6%、OS 100%と予後良好であった。再燃率が高いという問題はあるが、多臓器型でも生存率は高かった。再燃率を低下させるための新しい戦略が必要である。

9)「成人発症全身LCHは炎症性腸疾患に類似する:皮膚生検の重要性とメイヨークリニックで見られた皮膚病変を伴うLCH例のまとめ」

Adult-onset systemic Langerhans cell histiocytosis mimicking inflammatory bowel disease: the value of skin biopsy and review of cases of Langerhans cell histiocytosis with cutaneous involvement seen at the Mayo Clinic.

Podjasek JO, et al. Int J Dermatol. 2014 Mar;53(3):305-11.

【背景】LCHはしばしば、複数の臓器に浸潤することが知られている。しかし、LCHの消化管病変はまれである。【方法】当初は炎症性腸疾患と診断されていた、3年間の断続的な下痢の病歴のある68歳の女性例を紹介する。患者は皮膚生検を行った後、消化管、肺、肝臓、皮膚病変のある全身LCHであることがわかった。過去15年間のメイヨークリニックで見られた皮膚病変のあるLCH症例を後方視的に解析した。皮膚浸潤だけでなく全身臓器浸潤があるかどうか検討した。【結果】24例の皮膚LCH患者が同定された。本例以外に、消化管病変と皮膚病変を併せ持つ例が1例あった。この患者は、生後6か月で死亡した。他に成人発症の症例はなかった。【結論】LCHの消化管病変は、まれであるが誤診されることが多く、予後不良を示唆する可能性が高い。はっきりしない全身症状のある患者では、皮膚の所見と生検によって、全身性疾患を診断できる可能性がある。

10) 「オステオポンチンは、破骨細胞様多核巨細胞形成に重要な役割がある」

Osteopontin has a crucial role in osteoclast-like multinucleated giant cell formation.

Oh Y, et al. J Cell Biochem. 2014 Mar;115(3):585-95.

破骨細胞(OC)は、関節リウマチおよびLCHなどの炎症性骨疾患の病的骨破壊の主役である。最近、OC様多核巨細胞(MGC)の形成において、単球よりも未熟樹状細胞(iDC)が融合するほうがより速くより効率的であること、オステオポンチン(OPN)は、炎症性骨疾患の病因に関与していることが示された。iDCからのOC様MGC分化においてOPNが重要な要因であるという仮説を立てた。健常ドナーの血液から得られた単球由来のiDCをOC様MGCに分化させるin vitro培養系を用いた。分化の過程でのOPNの培養液中濃度およびOPN受容体の発現を測定した。OPNはアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)モチーフをもつが、プロテアーゼ切断によってSVVYGLRモチーフが現れる。完全型および切断型OPNの培養液中濃度は、OC様MGC形成の過程で増加した。OPNのRGDおよびSVVYGLRモチーフを認識する受容体の発現は、分化の後期で増加した。OPNの受容体への結合を阻止が、OC様MGC形成に影響するかどうかを分析した。 OPNのsiRNAで処理した単球は、効率的にiDCに分化したが、そのiDC からOC様MGCへの分化は有意に減少した。 RGD合成ペプチドによってOC様MGCの形成は大幅に減少しなかった。対照的に、SVVYGLR合成ペプチドによって有意な減少が生じた。これらのことから、切断型OPNは、自己分泌および/または傍分泌様式で、iDCからOC様MGCへの分化の初期段階において重要な役割を果たしていることを示唆している。