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JAPAN ACH STUDY GROUP 日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ

本サイトは、LCHの患者さんやご家族の方々と医師との意見・情報交換の場です。

第21回 最新学術情報(2013.02)

最近掲載されたLCH関連の論文抄録を紹介します。

1)「細胞傷害活性を有する新規ヒト抗CD1aモノクローナル抗体のファージディスプレーの作成」

Phage display generation of a novel human anti-CD1A monoclonal antibody with potent cytolytic activity.

Bechan GI, et al. Br J Haematol. 2012 Nov;159(3):299-310.

CD1aは、ランゲルハンス細胞と胸腺皮質細胞の細胞表面に発現しており、LCHや胸腺皮質型のT細胞急性リンパ性白血病(T-ALL)、他のCD1a陽性腫瘍に対する免疫療法の標的となる可能性がある。モノクローナル抗体CR2113は、半合成ファージディスプレイライブラリーから単離された6つの完全ヒト型モノクローナル抗体のパネルから、CD1抗原変異体を発現する細胞に対する特異性と親和性に基づいて選択された。CR2113は、T-ALL細胞株および患者検体のCD1aを認識した。共焦点顕微鏡によって、CR2113-CD1a複合体は37℃で細胞内に取り込まれることが判明した。さらに、CR2113は軽度の補体依存性細胞傷害(CDC)を誘発する一方、CD1a発現する細胞株やT-ALL細胞株、T-ALLの患者検体に対し強力な抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を示した。in vivoでの実験は、CR2113は抗体単独で、CD1a発現腫瘍に対し、軽度であるが特異的な抗腫瘍活性を示した。CR2113は、著しいADCC活性を有する高親和性ヒト型抗CD1aモノクローナル抗体である。これらの特性によって、CR2113は、LCHの臨床画像診断や標的治療だけでなく、他の臨床応用の可能性を持っている。

2)「肺LCHに伴う肺高血圧症:臨床的特徴と肺動脈性肺高血圧症治療の影響」

Pulmonary Langerhans cell histiocytosis-associated pulmonary hypertension: clinical characteristics and impact of pulmonary arterial hypertension therapies.

Le Pavec J, et al. Chest. 2012 Nov;142(5):1150-1157.

【背景】前毛細血管性肺高血圧症(PH)は、肺LCHの死亡率を増加させる合併症である。しかし、PHを合併した肺LCHの患者における肺動脈性肺高血圧症治療の効果や転帰は不明である。【方法】右心カテーテル法により確定されたPHのある連続した肺LCH患者を本研究の対象とした。初診時、経過観察時の特性および生存率を分析した。【結果】29例の患者を解析した。PHを伴う肺LCH患者の初診時の特性は以下の様であった。83%がWHOの機能分類のIII~IV、平均6分間歩行距離は355±95m、平均肺動脈圧は45±14mmHg、心係数は3.2±0.9 L/分/m2、肺血管抵抗は555±253 dyne/秒/cm5であった。PHに対する治療を受けた12例では、平均肺動脈圧と肺血管抵抗は、初診時と比べ経過観察時で改善した(56±14 vs. 45±12 mmHg、p=0.03、701±239 vs. 469±210 dyne/秒/cm5、p=0.01)。治療群に酸素化の有意な悪化は観察されなかった。29例の1年、3年、5年の推定値生存率は、それぞれ96%、92%、73%であった。肺動脈性肺高血圧症に対する治療が生存率改善に関連した以外では、WHOの機能分類が死亡に関連する唯一の因子であった。【結論】この患者群では、肺動脈性肺高血圧症に対する治療は、酸素化の悪化や肺水腫を生じることなく血行動態を改善した。WHOの機能分類は、唯一の予後因子であった。PHを伴う肺LCH患者に対する、前方視的臨床試験が行われるべきである。

3)「肺LCHにおける経時的なCTと肺機能検査」

Serial computed tomography and lung function testing in pulmonary Langerhans' cell histiocytosis.

Tazi A, et al. Eur Respir J. 2012 Oct;40(4):905-12.

肺LCHにおける経時的な肺機能の変化についてはほとんど知られていない。肺LCH患者を診ていくときに、経時的な肺CT検査が有用かどうかは評価されていない。この長期の後方視的研究では、肺CTと肺機能検査によって経時的な評価がされた49例を対象とした。肺機能の変化は、改善または悪化に分類した。CTでの病変の程度は肺機能と相関していた。肺機能は、約60%の症例で悪化した。最も高頻度に悪化したパラメータは、1秒量(FEV 1.0)と一酸化炭素拡散能(D(L,Co))であった。診断2年以内に、FEV 1.0が急激に低下した症例があった。主な肺機能障害のパターンは閉塞性障害であった。多変量解析では、診断時にFEV 1.0が予測値の何%であるかが、閉塞性障害の発生率に関連する唯一の因子であった。肺CTでの嚢胞性病変の増加は、肺機能障害と関連していたが、FEV 1.0やD(L,Co)の低下とは関連していなかった。経時的な肺機能検査は、高頻度に気道閉塞性障害を発症する肺LCH患者を診ていくうえで、不可欠である。診断時に肺CT検査は有益であるが、経時的なCT検査はあまり有用ではないと思われる。早期に進行する症例の特徴を明らかにするために、前方視的研究が必要である。

4)「Erdheim-Chester病ではBRAF V600E変異が高率に認められるが、他の非LCH組織球症ではみられない」

High prevalence of BRAF V600E mutations in Erdheim-Chester disease but not in other non-Langerhans cell histiocytoses.

Haroche J, et al. Blood. 2012 Sep 27;120(13):2700-3.

組織球症は、様々な予後を示す発症機序が不明な稀な疾患である。BRAF変異はLCHで認められている。我々はいくつかの種類の組織球症においてBRAF変異の頻度を解析した。組織球症127例の組織像を検討した。BRAF V600変異の検出は、パラフィン包埋試料から抽出したDNAのパイロシーケンシングにより行った。 Erdheim-Chester病(ECD)、LCH、Rosai-Dorfman病、若年性黄色肉芽腫、組織球性肉腫、播種性黄色腫、指状嵌入樹状細胞肉腫、および類壊死性黄色肉芽腫と診断されたのは、それぞれ23、12、3、2、1、46、39例であった。93例でBRAF変異が解析された。BRAF V600E変異は、ECD の24例中13例(54%)、LCHの29例中11例(38%)に認めたが、他の組織球症には検出されなかった。 ECDの4例が原病死した。LCHとECDにおいてBRAF V600E変異を高頻度に検出することは、これらの疾患の起源が共通していること示唆する。BRAF V600E変異を持つ悪性の組織球症の症例に対し、vemurafenibの臨床試験をすべきである。

5)「BRAF V600E変異タンパク質は、LCHの様々な成熟段階の細胞に発現している」

BRAFV600E mutant protein is expressed in cells of variable maturation in Langerhans cell histiocytosis.

Sahm F, et al. Blood. 2012 Sep 20;120(12):e28-34.

LCHは、臨床的にも組織学的にも不均質な疾患である。反応性炎症か腫瘍性か、いずれに分類するかが議論の的となっている。しかし、LCHにBRAF V600E変異がしばしばみられるという最近の知見は、後者を支持している。その変異を有し、増殖を促進する細胞が何であるかは正確にはまだわかっていない。我々は、89例の患者において、病変部位でBRAF変異を検出するためにBRAF V600E変異に特異的な抗体を用いた。BRAF V600E変異を89例中34例(38%)に見出した。BRAF V600E変異のある病変では、S-100とCD1aを同時に発現する大部分の細胞がBRAF V600E蛋白を発現していた。これらの細胞は、CD14とCD36も発現し、CD207も陽性であった。一方、CD80とCD86もBRAF V600E陽性細胞に発現していた。このように、骨髄系細胞やランゲルハンス細胞の脱分化抗原に一致する免疫組織化学プロファイルを示す様々な成熟細胞が、BRAF V600E変異を持っていた。結論として、変異特異的マーカーを用いることにより、BRAF V600E変異をもつLCHの腫瘍細胞を特定し特徴づけることが可能で、ルーチンのスクリーニングとして実現可能であることを示している。

6)「頭蓋骨以外の骨LCH:放射線学的進展度によるMRI像の特徴」

Extracranial skeletal Langerhans cell histiocytosis: MR imaging features according to the radiologic evolutional phases.

Jeh SK, et al. Clin Imaging. 2012 Sep-Oct;36(5):466-71.

【目的】頭蓋骨以外の骨LCHの放射線学的進展度によるMRI所見について記述する。【対象と方法】病理学的に診断され頭蓋骨以外の骨LCHの22例を対象とした。病変を放射線学的進展度によって、早期、中期、後期に分類した。MRI画像を、各病期別に、信号強度、内部低信号帯、fluid level、骨膜反応、隣接する骨髄と軟部組織の異常信号、および造影パターンについて、後方視的に分析した。【結果】放射線学的進展度の分類では、4例が早期、16例が中期、2例が後期であった。T1強調画像では、全例が低信号から中間信号強度を示した。 T2強調画像では、22病変中12(55%)が高信号、10(45%)が中間信号を示した。すべての病変は、T2強調画像で、びまん性に不均一の信号を示した。病変の内部低信号帯域が、13例(59%)にみられた。中期の2例でfluid levelがみられた。骨膜反応は13例(59%)でみられた。隣接する骨髄または軟部組織の異常信号は、20例(91%)でみられた。早期、中期、後期に分けてみる、骨髄および軟部組織の異常信号は、それぞれ100%、100%、0%であった。軟部組織腫瘤は8例(36%)に認められた。10病変(46%)で骨皮質の破壊がみられ、1例で病的骨折を認めた。造影検査がされた21例のうち、19例(90%)にびまん性造影効果が、2例(10%)に辺縁と中隔の造影が認められた。【結論】MRI像は??、特に初期および中期段階での頭蓋骨外の骨LCHの診断に有用であった。

7)「小児の骨LCH:長期後方視的研究」

Langerhans cell histiocytosis of bone in children: a long-term retrospective study.

Postini AM, et al. J Pediatr Orthop B. 2012 Sep;21(5):457-62.

LCHは、まれで、骨病変が多い疾患である。我々は、後方視的に整形外科的観点(症状、病変部位、治療法)と長期経過(疾患の状態、粗生存率(OS)、無イベント生存率(EFS))について 121例(1968年6月~2009年12月)を見直した。主要症状は、局所の痛みであった。整形外科的治療は、主に保存的療法であった??。最も多い病変は、孤発骨病変(単一臓器型の62%)であった。 1991年後の単一臓器型単独骨型(OS p=0.007; EFS p=0.03)、2歳以上(OS p=0.003; EFS p=0.001)が予後良好因子であった。治療は時代とともに改善し、生存率の向上につながっている。生検は必須である。

8)「肺LCH患者の経過観察における、ヘリカルCTスキャンの有用性」

Utility of spiral CAT scan in the follow-up of patients with pulmonary Langerhans cell histiocytosis.

Abbritti M, et al. Eur J Radiol. 2012 Aug;81(8):1907-12.

肺LCHは、多くは20~40歳のほとんど喫煙者のみに発症する稀な疾患である。疾患の予後を示す生物学的マーカーはわずかしかない。本研究では、肺LCH患者群の臨床放射線学的特徴を記述し、肺の半定量的CTスコアが本疾患の予後因子として価値があるかを検討した。12例の白人患者(男性6例、喫煙者7例と元喫煙者5例、平均年齢36±8歳)の発症時および4年間の経過観察期間中の臨床的、放射線学的、免疫学的データーを記録した。ほとんどの患者で、発症時および観察期間中において、半定量的CTスコアによって嚢胞性パターンの広がりが明らかになった。結節性パターンの広がりのある患者は、経過観察中に嚢胞性病変へと進展した。興味深いことに、嚢胞性病変の程度と、一酸化炭素拡散能(診断時、p<0.05、最終観察時、p<0.05)、1秒量(診断時、p<0.05、最終観察時、p<0.05)には有意な相関があった。進行性に肺機能が低下する患者は、CTで重度の嚢胞性変化を示した??。この結果は、高分解像度肺CTスキャンは、診断時および経過観察中の肺LCH患者の評価に必須であることを示唆している。今回提案した肺CTスコアは、予後因子として価値がある。

9)「骨病変を持つ成人LCH患者の最適な治療法

Optimal therapy for adults with Langerhans cell histiocytosis bone lesions.

Cantu MA, et al. PLoS One. 2012;7(8):e43257.

【背景】成人LCHの治療に関するデーターはほとんどない。治療法が異なり、観察期間が短い非比較試験で、症例数が少ないデーターしかない。我々は、最適な治療法を見出すため、骨病変のある成人LCH患者に対する3つの主な化学療法の反応を分析した。【方法と結果】単独病変または多臓器型の一部として骨病変のある58例の成人患者について、病変の部位と、手術や掻爬、ステロイド療法、放射線療法、ビンブラスチン/プレドニゾン療法、2 CdA療法、Ara-C療法に対する反応性を分析した。患者の平均年齢は32歳で、男女比に偏りはなかった。29例は1病変、16例は2病変、5例は3病変、8例は4病変以上を持っていた。ほとんどの骨病変は、頭蓋骨、椎体、顎骨であった。大多数の例において、化学療法、手術、掻爬、または放射療法で、病変の改善または消失が得られたが、ステロイド療法単独で病変が改善した例はなかった。 3つの化学療法レジメンを比較すると、ビンブラスチン/プレドニゾン療法を受けた例の84%は治療に無反応または1年以内に再燃したのに対し、治療が奏功しなかった率は、2CdA療法を受けた例では59%、AraC療法を受けた例では21%であった。治療毒性はビンブラスチン/プレドニゾン療法群に最も多く、75%にGrade 3-4の神経障害がみられた。Grade 3-4の血球減少が、2-CdA療法を受けた例の37%に、Ara-C療法を受けた例の20%にみられた。この研究は、後方視的研究であり臨床試験ではない点に主な限界がある。【結論】Ara-C療法は成人LCHの骨病変に対し効果的でかつ毒性が低い治療法である。それに比べ、ビンブラスチン/プレドニゾン療法は、全体的な反応性は低く、過度の毒性がある。

10)「成人LCH患者における骨密度の減少」

Reduced bone mineral density in adult patients with Langerhans cell histiocytosis.

Makras P, et al. Pediatr Blood Cancer. 2012 May;58(5):819-22.

この後方視的研究では、成人LCH患者の骨密度と骨代謝を評価した。25例の成人患者と25例の対照の骨密度と骨代謝の指標を評価した。20%の患者は、骨密度が年齢の予測値範囲以下(Z-スコア≦ - 2.0)であり、特に、すべての閉経後の女性と50歳以上の男性の患者に骨粗鬆症または骨減少症があった。活動性病変のある患者のZスコアは、活動性病変のない患者や対照に比べて有意に低くかった。化学療法を受けた14例すべてにおいて、骨代謝回転は低下していた。骨粗鬆症に起因する骨折は、305.15患者年の経過観察中に認められなかった。