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JAPAN ACH STUDY GROUP 日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ

本サイトは、LCHの患者さんやご家族の方々と医師との意見・情報交換の場です。

第18回 最新学術情報(2011.12)

最近掲載されたLCH関連の論文抄録を紹介します。

1)「成人の肺LCH:高解像度CT所見と病理像の比較、および、CT所見の経時的変化」

Pulmonary langerhans cell histiocytosis in adults: high-resolution CT--pathology comparisons and evolutional changes at CT.

Kim HJ, et al. Eur Radiol. 2011 Jul; 21(7):1406-1415.

【目的】高解像度CT所見と病理学的所見の比較、および、肺LCHの経時的なCT検査による評価。【方法】27例の成人肺LCH患者(男/女=20/7、年齢:41 ± 12.3歳)の肺病変のCT所見を再検討した。結節、微小結節、壁肥厚、壁菲薄、異常形態の嚢胞、網状陰影を含む肺CT所見を評価したのち、肺生検部位の病理組織学的所見と比較した。病変範囲の変化を判断するために、最初と最終のCT所見を比較した。【結果】肺異常のうちで最も高頻度に見られたのは微小結節(24例、89%)、次いで、壁肥厚(22例、82%)、壁菲薄(22例、82%)であった。壁菲薄や異常形態の嚢胞の病変にさえ、その壁に活動性の炎症性LCH細胞や好酸球が浸潤していた。壁が菲薄化した嚢胞では、肺胞壁に沿って嚢胞周囲に炎症性細胞が浸潤し、嚢胞周囲に肺気腫様変化を認めた。壁菲薄または異常形態の嚢胞は、周囲の嚢胞の壁の破壊を介して周囲の嚢胞と癒合する傾向を示した。14例(52%)で改善が見られ、9例(33%)で病変が進行した。【結論】肺LCH患者の半数以上が、その後のCT検査で改善を認めた。壁が菲薄化した嚢胞でさえ、病理組織検査では活動性の炎症性細胞浸潤を認め、その後のCT検査で改善を認めた。

2)「成人の肝LCH」

Langerhans' cell histiocytosis of the liver in adults.

Abdallah M, et al. Clin Res Hepatol Gastroenterol. 2011 Jun; 35(6-7):475-481.

成人LCHにおいて肝病変は比較的頻繁にみられるが、しばしば見過ごされている。実際には、明らかに局所的なLCHや肝の単独病変の場合には、見逃されることがある。我々は、フランスの組織球症研究グループに登録された85例の成人LCH患者のコホートから肝病変を伴う23例を提示する。最も頻度の高い臨床病型は、多臓器型であった(87%)。肝LCHの主な組織型は、硬化性胆管炎であった(56%)。症状は、肝腫大(48%)および/または肝臓の生化学検査の異常(61%、うち、トランスアミナーゼの上昇を伴う胆汁うっ滞が35%、胆汁うっ滞のみ22%、トランスアミナーゼの上昇のみ4%)であった。特に診断を示唆する所見は、MRI検査での胆道系の異常であった。肝LCHの自然史として、2つの段階が見られた、すなわち、初期の組織球の浸潤と後期の胆管系の硬化像である。肝病変は患者の生存に大きく影響することが分かった。したがって、すべての成人LCH患者において、初期診断の時点から定期的に臨床的および生物学的な肝臓の評価をすべきである。肝病変を示唆する所見があれば、できるだけ早く、MRI検査と肝生検を考慮すべきである。肝病変が確定された場合には、LCHに対する治療とともに、他の胆汁うっ滞性疾患に倣って、ウルソデオキシコール酸による治療を推奨する。しかし、肝LCHの理想的な治療法は見出されておらず、進行した症例では移植が唯一の治療法である。

3)「ゾレドロ酸によるLCHの骨病変の治療:症例シリーズ」

Treatment of Langerhans cell histiocytosis bone lesions with zoledronic acid: a case series.

Sivendran S, et al. Int J Hematol. 2011 Jun; 93(6):782-786.

LCHは、特殊な樹状細胞(ランゲルハンス細胞)のクローン増殖によって引き起こされるまれな疾患である。まれに致命的で重大な合併症を併発することがある。骨病変は特に破壊的であり、現在のところ、骨病変や多くの骨病変を伴う患者が経験する激しい骨痛に対する標準的な治療法は存在しない。それまでに濃厚に治療を受けたにもかかわらず骨痛を伴うLCH患者に対して、がん患者の治療を応用したビスフォスフォネート治療が行なわれた症例が、文献上12例見出された。興味深いことに、これらの患者において骨痛は、完全またはほぼ完全に消失し、機能状態に戻り、75%の症例で放射線学的にLCH病変の縮小または退縮が見られた。これらのうち新世代のビスフォスフォネート、ゾレドロン酸で治療されていたのは6例のみであった。本稿では、ゾレドロン酸4mgの静注を月1回1年間受け、完全に骨痛が消失した骨病変を伴う2例のLCHを報告する。2例ともビスフォスフォネート治療後、LCH病変の縮小を認めた。1例目は、LCHの初期治療としてビスフォスフォネートを使用した文献上はじめての報告例である。この症例は、従来の治療を受けることができない例においては、病勢安定化と症状緩和のために、ゾレドロン酸療法が初期治療として役割を果たす可能性を示している。

4)「先天性自然治癒性の細網組織球症:診断における重要な課題」

Congenital self-healing reticulohistiocytosis - an important diagnostic challenge.

Jensen ML, et al. Acta Paediatr. 2011 May; 100(5):784-786.

【目的】皮膚ランゲルハンス細胞組織球症の良性の特殊型であり、新生児期に皮膚病変を呈する、先天性自然治癒性細網組織球症について、現在と新たな知見を提示する。【方法】このまれな疾患を2例報告し文献を検討した。【結果】新生児を専門とする皮膚科医の診察を直ちに受ける新生児はごくわずかで、皮膚科医が評価するより前に皮膚病変の自然退縮が起こっている可能性がある。自然治癒するか播種性となるかを確実に区別できる基準はなく、総合的評価と経過観察が不可欠である。【結論】我々のデータは、先天性自然治癒性細網組織球症がいかに見逃されやすいかを示し、先天性自然治癒性細網組織球症が疑われる場合には、全例において、新生児治療室で患部をインスタント写真で撮り、遠隔皮膚科相談を利用することが重要で価値があることを強く示している。

5)「消化管LCH:12例の臨床病理学的研究」

Gastrointestinal tract langerhans cell histiocytosis: A clinicopathologic study of 12 patients.

Singhi AD,et al. Am J Surg Pathol. 2011 Feb; 35(2):305-10.

LCHによる消化管浸潤はまれである。それは通常、多臓器型の男性患者に見られ、生命予後は不良でかつ合併症の発症率は高い。小児期に発症しやすいが、成人にも少数の報告はある。この疾患の経過をさらに明らかにするために、我々は12例の消化管LCHの24病変を収集した。2例は小児(4か月および2.3歳)で10例は成人(40~77歳、平均58.4歳)、女性が優位(12例中9例、75%)であった。小児例は2人とも、発育不全、出血性下痢と貧血を呈した。対照的に、成人は10例中5例(50%)が無症状で、残りには消化管とは関係のない症状があった。内視鏡検査では、小児では、十二指腸と複数の大腸部位の病変を認めた。しかし、成人では、10例中8例(80%)は孤発性のポリープを呈し、主に結腸直腸部位に認めた(8例中7例)。病変サイズは0.1~0.8cm(平均0.4cm)で、粘膜内病変が多く(24病変中18病変:75%)、境界明瞭なものが24病変中14病変(58%)、浸潤性のものが24病変中10病変(42%)であった。顕微鏡的所見は、好酸球よりもリンパ球浸潤が優位な例(24病変中12病変:50%)や大きな核小体が見られる例(24病変中2病変:8%)もあったが、他の部位のLCH組織像と類似していた。覆っている粘膜や捕捉された粘膜上皮の反応性の変化(24病変中10病変:42%)、粘膜潰瘍(24病変中3病変:13%)、巣状壊死(24病変中1病変)、および多核巨細胞は(24病変中1病変)もみられた。有糸分裂像は認めなかった。免疫組織化学では、すべての病変がS -100蛋白とCD1a陽性であった。11例(92%)で、2か月から5.3年(平均1.8年)の経過追跡の情報が得られた。1例の小児が追跡不能であった。しかし、もう1例の小児は多臓器病変を発症し、初期診断後1年以内に死亡した。成人の2例が、初期診断からそれぞれ2か月後と2年後に皮膚病変を発症し、そのうち1例には多発性大腸疾患を認めた。この研究から、消化管LCHは小児だけでなく成人にも存在し、女性に多いことが分かった。以前の報告と一致し、小児例は多臓器型に多く予後不良であった。しかし、成人では、LCHは通常、偶発的に孤独ポリープとして見つかる。まれに多臓器型となることもあるため、注意深い経過観察が望ましい。

6)「小児の中枢神経LCHの頻度と放射線学的所見:コホート研究」

Incidence and pattern of radiological central nervous system Langerhans cell histiocytosis in children: a population based study.

Laurencikas E, et al. Pediatr Blood Cancer. 2011 Feb; 56(2):250-7.

【背景】LCH患者は、神経変性およびその他の中枢神経系障害を発症することがあり、MRIで病変を検出できる。我々は、明確に定義された小児LCHコホートにおいて、その発生率および病的脳MRI所見出現率を推定した。【方法】1992-2001年の間にストックホルム郡でLCHと診断された15歳未満の小児のなかで、臨床的および/または検査所見的に、内分泌機能障害を含む中枢神経系病変を示す症例の脳MRI検査を単一施設で実施した。【結果】LCHと診断された29例(男児16、女児13)のうち16例(55%)に脳MRI検査が行われた、6例は内分泌学的異常(5例に尿崩症、1例に低IGF-1、1例に汎下垂体機能低下症)、10例は臨床的中枢神経系症状があったためであった。脳MRI異常は、8例(28%)に、LCH診断後中央値3.5年(範囲1~11.4年)の時点で認められた。29例中7例(24%)に神経変性に関連するMRI所見を認め、発生率は少なくとも小児100万人あたり年間2.1人に相当した。神経変性異常は、頭蓋顔面部位に病変のある例でより頻度が高い傾向にあった(p= 0.12)。【結論】LCHにおける神経変性に関連した画像所見の年間発生率は、少なくとも小児100万人あたり年間2.1人、すべての小児LCHの24%と推定される。重要な問題は、すべてのLCH患者、あるいは特定の病型のLCH患者に対して、MRIを含む長期の経過観察を推奨すべきかどうかである。中枢神経病変のあるLCH患者では、神経学的、神経心理学的、神経生理学、神経化学的および神経放射線学的な経過観察の必要性が示唆される。

7)「再燃した小児LCHに対するビスフォスフォネート治療の日本における全国調査」

Nationwide survey of bisphosphonate therapy for children with reactivated Langerhans cell histiocytosis in Japan.

Morimoto A, et al. Pediatr Blood Cancer. 2011 Jan; 56(1):110-5.

【背景】いくつかの研究によって、ビスフォスフォネート治療がLCHに効果的であることが示唆されている。しかし、小児LCHに対するビスフォスフォネート治療の有効性と安全性については明らかではない。【方法】ビスフォスフォネート治療を受けた小児LCH症例のデータを日本小児白血病/リンパ腫研究グループに参加する病院から後方視的に収集した。【結果】組織学的に証明された21例の小児LCH症例が見つかった。これらのうち、再燃LCHに対して、パミドロネート治療が行われた16例の臨床データを詳細に分析した。パミドロネート治療後の観察期間の中央値は2.8年(範囲:0.9~9.3年)であった。パミドロネート治療の開始時年齢の中央値は9.4歳(範囲:2.3~15.0歳)であった。全例に、1つまたは複数の骨病変があったが、リスク臓器浸潤を伴う例はなかった。多くの症例において、パミドロネート治療は1.0 mg/kg/コースの用量で、4週間隔で6コース投与されていた。16例中12例で、皮膚病変(3例)と軟部組織病変(3例)含む、すべての活動性病変が消失した。これらのうち、8例はパミドロネート治療後、中央値3.3年(範囲:1.8~9.3年)の時点で、活動性病変はなかった。無増悪生存率は、3年の時点で56.3±12.4%であった。無増悪生存率は、2回目以降の再燃例と比較し、1回目の再燃例において有意に高かった。【結論】パミドロネート治療は、骨病変を有する再燃LCHに対して効果的な治療法かもしれない。小児の再燃LCHに対するパミドロネート治療の有効性を検証する前方視的臨床試験の実施が望まれる。

8)「LCHの発症機序におけるp16の役割」

Role of p16 in the pathogenesis of Langerhans cell histiocytosis.

Kim SY, et al. Korean J Hematol. 2010 Dec; 45(4):247-52.

【背景】細胞レベルでの遺伝子変異が、LCH細胞の増殖とアポトーシスを制御する細胞機構に大きな影響があるかもしれないという仮説が立てられている。【方法】p16蛋白の発現がLCH症例の予後の予測に有用かどうかを調べた。1998年3月~2008年2月の間にアサン医療センターとチュンナム大学病院でLCHと診断され経過観察されている小児の保存パラフィンブロックを検討した。【結果】標本をp16抗体で染色し、LCH細胞の染色性を以下の尺度を用いて半定量的に評価した、すなわち、陰性:無染色、±:弱陽性、1+:周囲のリンパ球と同程度に染色、2+:リンパ球よりも強い染色、3+:リンパ球よりはるかに強い染色。陰性と±を低発現グループに、1+と2+、3+を高発現グループとした。51例(男児27、女児24)の年齢の中央値は49か月(範囲:0.6~178か月)で、LCHはCD1a陽性に基づいて診断された。p16蛋白は、1例を除いて、様々な程度で発現していた。多臓器型、リスク臓器浸潤および再燃の頻度は、低発現グループに比べ高発現グループで高い傾向があった。【結論】p16蛋白はLCH細胞の増殖とアポトーシスを制御する細胞機構に大きな影響を与える可能性があり、したがって、LCHの臨床転帰と予後に影響を及ぼす可能性がある。

9)「LCHとRosai-Dorfman病の共存:まれに2つの組織球性疾患が関連する可能性」

Co-occurrence of Langerhans cell histiocytosis and Rosai-Dorfman disease: possible relationship of two histiocytic disorders in rare cases.

O'Malley DP, et al. Mod Pathol. 2010 Dec; 23(12):1616-23.

Rosai-Dorfman病とLCHは、両者ともに免疫補助細胞の異常である。今までに、Rosai-Dorfman病とLCHが共存した症例が2例報告されている。我々は、さらに9例を追加し、特徴的な臨床像といくつかの分子学的研究を報告する。組織学的な検討を行った。スライドまたはブロックが使用可能であったすべての症例において免疫組織化学的染色を行った。CD1a、S-100、CD3、CD20、langerin、CD68、CD163、CD21、CD35およびCD123の免疫組織化学的染色を組み合わせ行った。高解像度アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションを、5症例の6検体で行った。7例が女性で2例が男性、平均年齢は25歳(範囲:15か月~59歳)であった。大半の症例で、病変はリンパ節であった。LCHの部分では、好酸球浸潤を伴い、「コーヒー豆」様の異型性のない核と明るい細胞質のLCH細胞が存在する典型的な組織像を示していた。免疫染色の所見も典型的で、CD1a、S100、CD68とlangerinが陽性であった。Rosai-Dorfman病の部分では、全例において細胞内細胞貫入現象がみられた。細胞は中型から大型で、大きな円形の核と明るいまたは淡い広い細胞質を伴っていた。病変部位の細胞はS100、CD68、CD163陽性であったが、langerinやCD1aは発現していなかった。アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションでは、6検体中4検体で増幅および/または欠失を示した。1検体では、増幅も欠失も見られなかった、もう1検体ではLCHの部分では増幅および欠失を認めたが、Rosai-Dorfman病の部分では異常がみられなかった。これらの知見は、以前のLCHの研究において報告された結果に一致した。我々は、LCHとRosai-Dorfman病の共存例の臨床的および病理学的所見を報告した。さらに、我々の症例に基づけば、この2疾患が共存している場合には、病態生理学的に関連している可能性が示された。

10)「成人LCHの内分泌学的症候」

Endocrine manifestations of Langerhans cell histiocytosis diagnosed in adults.

Garci´a Gallo MS, et al. Pituitary. 2010 Dec; 13(4):298-303.

LCHは、病因不明のまれな肉芽腫性疾患である。我々は、病理組織学的にLCHと診断された、4例(男性3、女性1)、平均年齢33.5歳(範囲:21-40歳)のデータを後方視的に解析した。全例に内分泌障害を示唆する症状を認めた。主訴は、2例が甲状腺腫大、3例が多飲多尿であった。LCHの診断より前に、2例に尿崩症と性腺機能低下症の症状があったが原因は精査されていなかった。症状の発症からLCH診断までの期間は平均6.25年(範囲:2~13年)であった。病理組織学的診断は、2例は甲状腺全摘術、1例は皮膚病変生検、もう1例は下垂体茎生検によって確定されていた。最初の2例は、細針吸引生検により分化型甲状腺癌であると誤って診断されて手術適応となり、免疫組織化学検査によってLCHと確定診断された。3例が化学療法で治療された、そのうちの1例は、すでに視床下部-下垂体領域に放射線療法を受け、放射線照射後の下垂体機能低下症を発症していた。