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JAPAN ACH STUDY GROUP 日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ

本サイトは、LCHの患者さんやご家族の方々と医師との意見・情報交換の場です。

LCH-HU試験

はじめに

Langerhans細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis, LCH)に対する多剤併用化学療法の進歩によって、LCHの生命予後は著明に改善しており、単一臓器型やリスク臓器浸潤を有さないLCHにおいては、長期生存は99-100%で得られており、リスク臓器浸潤を有する重症例であっても死亡率は10-15%まで低下している。一方で、LCHの再燃率(再発率)は、化学療法の発展に伴い低下しているものの多臓器型LCHでは30-50%、多発骨型LCHでは20-30%と依然として高い。再発率が高いにも関わらず長期生存率が維持されていることからもわかるように、再発LCHに対する治療反応性は良好であり、生命を脅かすことはほとんど生じ得ない。しかしながら、再発LCH(つまり、活動性LCH病変の存在)は、LCH患者のQuality of life(QOL)低下に直結し、さらに様々な不可逆性病変(尿崩症、下垂体前葉機能低下症、神経変性症など)の発生率を有意に増加させることが報告されている。このため、再発率を低下させる治療開発に加えて、毎回の再発に対して早期に確実にLCH病変を制御することが必要と考えられている。再発LCHに対する治療は、初期治療に用いたステロイド、ビンカアルカロイド系薬剤の投与が行われる事が多く、その他には、ビスフォスフォネート製剤、NSAIDs、クラドリビンなどが行われる事があるが、再発治療として確立されたものは現時点では存在しない。

LCHに対するハイドロキシウレア

ハイドロキシウレアは、1966年に登場した古くから存在する抗悪性腫瘍剤である。慢性骨髄性白血病を始め、様々な骨髄増殖性疾患に対して有効性が証明されており、小児では鎌状赤血球症に対して有効性が既に証明されている。ハイドロキシウレアは発売から50年以上の歴史を有しており、安全性および急性期だけでなく長期投与でも有害事象が非常に少ない事が他疾患で既に証明されている。

再発LCHに対するハイドロキシウレアの有効性は、2016年にBlood誌に報告されている。対象患者数は15例(成人13例、小児2例)であり、治療期間の中央値は10ヶ月(範囲1-24ヶ月)であり、最良効果は完全寛解が8/15例(53%)、部分寛解が4/15例(27%)と非常に良好な結果であった。再発は6例に認められ、うち4例はハイドロキシウレア内服中、2例は治療終了後に再発をきたしていた。この治療に伴うGrade3以上の有害事象は、貧血と好中球減少が1例、血小板減少と好中球減少が2例に認められ、いずれもハイドロキシウレア投与量の減量で対応可能であった。その他、感染症を含め重篤な有害事象は認められていない。

LCH-HU試験について

本試験では、リスク臓器(肝臓・脾臓・造血器)に浸潤を認めない再発LCHを対象として、ハイドロキシウレア(ハイドレア®)とメトトレキサート(メソトレキセート®)による治療の安全性と有効性を検証することを目的としている(注:メトトレキサートはハイドロキシウレア単剤で症状の悪化が認められた症例のみに追加投与する)。本試験で投与する薬剤は、すべて内服薬であり、静脈内投与のため血管確保を行う必要はなく、受診頻度も既存治療と比較し少なくすることが可能である。さらに、ハイドロキシウレアは500mg,1カプセルあたり241.3円、メトトレキサートは2.5mg,1錠あたり29円と安価であり、医療経済的にもハイドロキシウレア/メトトレキサートによる治療は利点を有している。以上より、ハイドロキシウレア/メトトレキサートによる治療は再発LCHに対する治療選択肢の1つとして非常に有望であると考えている。

<LCH-HU試験の主な選択基準>

  1. カプセル製剤の内服が可能であること。
  2. 初発または再発時に病理組織学的にLCHと診断されている。
  3. 再発である(再発回数は問わない)。*尿崩症単独再発は除く。
  4. 再発に対する治療が開始されていない(局所治療は除く)
  5. 再発時リスク臓器(肝臓・脾臓・造血器)浸潤なし、血球貪食性リンパ組織球症の合併なし

<LCH-HU試験の参加施設(北から南へ)>

  1. 北海道大学
  2. 宮城県立こども病院
  3. 国立成育医療研究センター
  4. 東京大学医科学研究所
  5. 埼玉県立小児医療センター 
  6. 神奈川県立こども医療センター
  7. 静岡県立こども病院 
  8. 兵庫県立こども病院 
  9. 京都府立医科大学 
  10. 滋賀医科大学  
  11. 広島大学 
  12. 九州大学

参考文献

  1. Zinn DJ, Grimes AB, Lin H, Eckstein O, Allen CE, McClain KL. Hydroxyurea: a new old therapy for Langerhans cell histiocytosis. Blood. 2016;128:2462-5.
  2. Sakamoto K, Kikuchi K, Sako M, Kato M, Takimoto T, Shioda Y. Pilot study to estimate the safety and effectiveness of hydroxyurea and methotrexate recurrent langerhans cell histiocytosis (LCH-HU-pilot). Medicine (Baltimore). 2022;101:e31475.
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