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JAPAN ACH STUDY GROUP 日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ

本サイトは、LCHの患者さんやご家族の方々と医師との意見・情報交換の場です。

Histiocytosis-MAPKi研究(ダブ/トラ観察研究 BW≧26kg)

BRAF遺伝子変異を有する進行・再発の組織球症に対するBRAF阻害薬とMEK阻害薬の併用療法の治療効果予測因子を解析する前方視的観察研究」

はじめに

組織球症はMAPキナーゼ経路の遺伝子変異に起因する稀な炎症性骨髄腫瘍であり、近年、遺伝子変異に基づいた組織分類や遺伝子変異に対する標的治療が開発されています。本邦で世界に先駆けて2023年11月にBRAF V600E遺伝子変異陽性の組織球症に対するBRAF阻害薬とMEK阻害薬の併用療法(BRAF+MEK阻害薬治療)が承認されました。

Histiocytosis-MAPKi試験について

世界的にも組織球症における遺伝子変異に対する標的治療の位置づけは不明です。そこで、2024年2月からHistiocytosis-MAPKi前向き観察研究を開始し、どのような症例に使用すべきか、適切な投与期間はどうか、投与中止が可能か、などの疑問点を解決する目的で下記の探索的研究などの取り組みを行っています。

  • 1)対象患者の血漿cell free DNAもしくは末梢血単核球のDNAにおけるBRAF V600Eアレル頻度の推移とGood response(GR)達成率との関連
  • 2)対象患者の治療前の病変組織の組織球症高感度遺伝子パネル検査による遺伝子変異とGood response (GR)達成率との関連

<この試験の対象となる患者さん>

主な適格基準

  • ・組織学的に組織球症と診断されている(施設診断にて確認されていること)。
  • ・標準的治療に対して治療抵抗性または再発、あるいは標準的治療のない組織球症である。
  • ・体重が26kg以上である。
  • ・コンパニオン診断薬(MEBGENTM BRAF5キット)でBRAF V600E遺伝子変異陽性を確認した、あるいはがん遺伝子パネル検査のエキスパートパネルで推奨を受けている。
  • ・ダブラフェニブ/トラメチニブによる治療を開始予定である、あるいはダブラフェニブ/トラメチニブ開始後から2ヵ月(初回治療効果判定の前)以内である。
  • ・本試験登録について患者本人ないし代諾者への十分な説明と文書による同意が得られている。

主な除外基準

  • ・ダブラフェニブ/トラメチニブ以外に抗がん剤を併用している。
  • ・研究責任者が研究対象者として不適当と判断している。

<試験期間>

  • 予定登録期間: 3年
  • 追跡期間: 登録期間終了後1年
  • 総研究予定期間: 4年(2024年2月〜2028年3月予定)

<試験治療の概要>

本研究のデザインは、「多施設共同の前方視的観察研究」です。

本試験では、保険診療においてコンパニオン診断薬(MEBGENTM BRAF5キット)でBRAF V600E遺伝子変異陽性を確認した症例のうちダブラフェニブ/トラメチニブの投与を受け、最終的に治療24週終了まで8週間毎の CT検査もしくはMRI検査による治療効果判定で最良総合効果(Best overall response)を評価します。探索的研究として、リキッドバイオプシや治療前の病変組織の遺伝子変異と寛解率(GR:good response)との関連を解析し、ダブラフェニブ/トラメチニブの治療効果予測因子の解析を行います。

治療薬は保険診療下で使用可能であり、適正使用ガイドに従って副作用管理や薬剤容量調整を行います。

病変組織の組織球症高感度遺伝子パネル検査による検査結果をご返却致します。

<研究代表者、連絡先>
東京大学医科学研究所附属病院 血液腫瘍内科 佐藤亜紀
〒108-8639 東京都港区白金台4-6-1 電話:03-3443-8111

おわりに

世界的にも組織球症における遺伝子変異に対する標的治療の開発が活発に行われていますが、明確なエビデンスは未だに構築されていません。今回の組織球症に対するBRAF阻害薬とMEK阻害薬の併用療法の適応拡大は世界初であり、まだ十分なデータが得られていません。この治療の効果、副作用、治療効果予測因子などの解析は今後の組織球症治療の発展につながる可能性があります。また、血液検査により標的治療が中止可能かどうかが判明すれば患者さんへの負担軽減につながります。

希少疾患のため標準治療が確立しておらずお困りな組織球症患者さんのために、是非、この前向き観察研究へご参加お願い致します。