LCH-12-LTFU研究
「LCH-12登録例の不可逆性病変と予後に関する前方視的縦断観察研究」
はじめに
LCH-12試験では、ビンクリスチンにより早期維持相を強化し、小児の多臓器(MS)型および多発骨(MFB)型の再発率の低下・無イベント生存率の向上を目指した。先行研究と同様に全生存率は良好(MS型 99.1%[95%CI 93.6-99.9], MFB型 100%)であったが、無イベント生存率は短期の観察期間(中央値5年)では、MS型(59.8%[95%CI, 49.9-68.4%])、MFB型(67.4%[95%CI, 51.2-79.2%])ともに、先行研究と差はなく、改善は得られなかった。
しかし、中枢性尿崩症や下垂体前葉機能不全、中枢神経変性症などの続発症の発生頻度は、LCH診断後少なくとも10年後まで増加し続けるため、これらについては時期尚早で評価は不能である。
LCH-12-LTFU研究について
LCHの診断後、数年を経過して発症してくる続発症について、担当医と患者の双方に対して調査し、続発症の実態を明らかにし、診療体制を整備していくことを目的とする。
<対象症例>
日本小児がん研究グループ(JCCG)が実施したLCH-12試験に参加した患者
<調査期間>
研究開始から2032年11月末まで
<調査の3本柱>
- 長期予後調査、晩期続発症発生調査
再発の有無、再発後の治療、続発症の有無。 - 認知機能検査
LCHには神経変性症や学習障害などをきたすことが知られている。学校生活や社会生活のサポート、将来設計に役立つような支援体制を作ることを目的とし、5歳(小学校就学準備にあわせて実施)、9歳(中学進学の選択を早めから相談)、14歳・17歳(進路・将来の修飾を見据えて早めから相談)に認知機能検査を実施する。 - Quality of life(QOL)調査
LCH治療後におきた晩期続発症によって、患者自身がどのように困っているのかを正しく評価して、支援体制を整えることを目的とし、QOL調査を行う。
<調査方法>
年に1回、主治医が患者の状態をデータセンターに報告する。また、患者(あるいは保護者)にも、年に1回アンケート調査やQOL調査を行う。
おわりに
LCH-12-LTFU研究では、「調査をするだけではなく患者さんの支援へとつながる研究(例:相談の場が増える、社会や学校がサポート体制を整えてくれる)」を目指しています。患者さんやご家族が、自分が取り組んでいること、これから頑張っていきたいことに対して前向きに取り組めるように、社会全体でサポートできる体制を作って行きたいと考えていますので、ご協力よろしくお願いします。